きしわぎ隆志

ドラゴンボールで、悟空の最終奥義に元気玉と言う技がありました。
「みんな、オラに元気を分けてくれ!」という名セリフは覚えている人も多いでしょう。
この物語の主人公である孫悟空は、自分一人では倒せない強大な敵に対峙した時、地球上の皆から少しずつ「元気」を貰って、それを一身に集め解き放つのです。
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卒業を終えた初夏の昼下がり、アトリエのみんなは外に出払っていて、部屋は薄暗くシーンと静まり返っていました。窓からは柔らかい風が吹いています。

「今日はやるべきことがなにも無い」ひとり、きしわぎは呟いてみました。
 
きしわぎの今日の予定は何もありませんでした。明日の予定も、それ以後の予定も。
予定は何もありませんでした。
きしわぎの目の前には、ただ、ただ、時間がありました。きしわぎは、自分がこの世の中に取り残されてしまったのではないか、と感じました。

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卒業制作を終えた三月中頃、きしわぎは大学の就職科にひょっこり顔を出してみました。
「もう卒業間近だし、そろそろ就職とかも考えなくちゃだよね!」と、なんとなく考えていたのです。そこで、きしわぎは目玉が飛び出るくらい驚きました。なんということでしょう!大学から紹介されている求人はすべて終っているじゃありませんか!
きしわぎは、必死に卒業制作の作品を作っている間に、大学生が"就職"できるチャンスであったはずの"新卒"のタイミングを逃してしまいました。さて、どうすればいいんだろう?きしわぎは三月の透き通る八王子の夕焼けに頭を抱えました。

でも、ちょっと待てよ?きしわぎは思いました。いままで会社に入って働くことなんて考えたこともなかったので、自分が何を仕事にすればいいのか全然わからなかったのです。

「世の中のオトナはみんな働いてるけど、どうやって仕事を見つけてるんだろう?」

これが、きしわぎの心に湧いた、仕事についての初めての疑問でした。

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