(撮影、編集:東間 嶺、以下全て同じ)
* 【承前】各駅電車のステージ(第2回)*
女子高生の体が、電車の揺れによって傾き、体にぶつかった。彼女の髪の匂いなどを嗅ごうと、息を吸い込んだ。彼女の右手の指は、携帯、ではなくスマフォの液晶上をせわしなくも優雅に飛び回っている。
かちかち、かちかちかちかちかち(実際こんな音はしないが、おれの耳は『ケータイ』から脱却していない)。
T高校の制服を着ているこの娘は、おれの降りる駅の一つ前の駅で降りていく筈だ。誰にどんな内容のメールをしているのだろう。あんなに一生懸命にメールするような友達がおれにはいない。肩越しに画面を覗いてみようとしたが、角度が悪く反射して見えない。
この娘は紺のソックスを履いている。それは今知った情報ではなく、さっき見て気付いた事だ。スカートの影に覆われた白いふくらはぎにぴったりと張り付いたソックスの様子は可愛らしく、学校が終わって家に帰り、それを脱いだ脚にはうす赤くゴムの凹凸が肌に残っているだろう。ベッドに腰掛けて彼女は一人、なんとなくその跡を自分で撫でてみたりするかもしれない。指先が凹と凸を交互に、順々に上がったり下がったりを繰りかえしながら、肌の上を滑っていく。
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かちかち、かちかちかちかちかち(実際こんな音はしないが、おれの耳は『ケータイ』から脱却していない)。
T高校の制服を着ているこの娘は、おれの降りる駅の一つ前の駅で降りていく筈だ。誰にどんな内容のメールをしているのだろう。あんなに一生懸命にメールするような友達がおれにはいない。肩越しに画面を覗いてみようとしたが、角度が悪く反射して見えない。
この娘は紺のソックスを履いている。それは今知った情報ではなく、さっき見て気付いた事だ。スカートの影に覆われた白いふくらはぎにぴったりと張り付いたソックスの様子は可愛らしく、学校が終わって家に帰り、それを脱いだ脚にはうす赤くゴムの凹凸が肌に残っているだろう。ベッドに腰掛けて彼女は一人、なんとなくその跡を自分で撫でてみたりするかもしれない。指先が凹と凸を交互に、順々に上がったり下がったりを繰りかえしながら、肌の上を滑っていく。