いしだだいすけ

豊田市美HP(展覧会URL)

 SF好きとしてはたまらなく興味をそそられるタイトル「反重力」。9月から始まったこの展覧会の告知文には、宇宙の加速膨張、宇宙旅行、テレポーテーションなどの言葉が並び、出品作家の名前にも心躍る。一方で気になるのが、同展が「揺れる大地 われわれはどこに立っているのか 場所、記憶、そして復活」をタイトルに掲げ、東日本大震災とその後の世界に正面から密接に向き合った愛知トリエンナーレとの連携事業であることだ。連携事業でありながら「反重力」という言葉づかいはいかにも解放的で大地と、その上に成り立つ現実から離れているように思える。しかし、この展覧会は現実世界、すなわち震災後を生きる2013年の私たち自身にとって、単なるファンタジーでも現実逃避でもない。むしろ、私にとっては途方もない現実味を伴ったものだった。以下はそのことについて展覧会を振り返りながら考えてみたい。
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転載元:site0.9 
2013年8月12日(月曜日)
「文化についての試論、または文化受容のためのエクササイズ」


7月13日、Give me little more.という店のオープニングパーティーにいた。スペースの「多目的さ」を売りにするだけあって、昼はトークイベント、夜は音楽イベントという気合いの入ったパーティだった。店主であり旧友である新美くんの企画である。今回私はトークイベントの方の企画に関わらせてもらっていた。松本市という街を舞台に、スペースのスタイルやコンテンツの楽しみ方について4時間みっちり話合う濃度の濃いイベントである。「パブリックな場所とはなにか?」「クリエイティブに文化を楽しむこととは?」「普通にコンテンツを楽しむ人が批評を行う必要はあるの?」「批評は他人の楽しみに横やりを入れ、楽しみ方を押し付けることにならないの?」などの質問が飛び交いかなり踏み込んだ議論となった。トークの内容は改めて店のHPで報告するのでそちらをご覧いただきたい。(http://givemelittlemore.blogspot.jp/

そのトークイベントにこんな鋭いフィードバックを頂いた。「例えばナチュラル系雑誌を見ておしゃれな買い物をすることはクリエイティブとは言えないの?」「そもそもなんでクリエイティブじゃなきゃいけないの?」(フィードバックリンク

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展覧会レヴュー

「膜|filmembrane」@小金井アートスポット シャトー2F

展覧会ウェブサイトhttp://filmembrane.tumblr.com/ 

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膜。フィルム、牛乳の膜、サランラップ、羊膜、油膜、オブラートなどなど。膜というものを考えてみれば、なんてあやふやなものなのだ。薄くて、ぺろんしていて、頼りなく、面でしか存在できない。しかしなんとも無視し難い存在だ。それは壁のように両者を完全に分つ訳ではなく、ものの内部と外部に仲って両者の関係を取り持ったり(浸透)、あるものの表面の分身としてその主の表情・状態を浮かび上がらせたりする(膜が張る)。膜というものは、何かと何かの間や表面にあることで、ものの性質や状態への感覚を敏感にするのだ。

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2006年に上梓された『地域文化のアクチュアリティ−愛媛からの発信−』という本がある。開けば愛媛の舞台芸術、音楽、美術の諸活動が広範に紹介されていて興味深い。伝統芸能からパブリックな意味を語りづらいインディー領域までを一冊で取り扱うところに、この本を世に送り出した愛媛大学地域創成研究センターの姿勢が伺える。本稿では、その基本姿勢を示す愛媛大・寿卓三氏による序論『住まうと芸術文化一彷程としての帰郷,あるいは本書の序論帰郷としての彷程一』について考えてみたい。


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地域文化のアクチュアリティ―愛媛からの発信 [単行本]
著者:愛媛大学地域創成研究センター出版:シード書房(2006-03)

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