書評


【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第78回概要
 
1.日時:2017年08月26日(土)18時〜20時
2.場所: マイスペース新宿区役所横店1号室
3.テーマ:田中 圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』を読む。
※ 参考図書:
岡田尊司『うつと気分障害 』(幻冬舎新書)、
桜玉吉『幽玄漫玉日記⑥』、『御緩漫玉日記 ③』
4.レジュメ作成:さえきかずひこ(@UtuboKazu)
5.備考:FBイベントページ



新宿文藝シンジケート 第78回読書会レジュメ
(作成者:さえきかずひこ)


明日の読書会を前に、レジュメ作成を先行公開することにした。まず、結論としては下記のようなものである。


結論:『うつヌケ』は、多様に存在する〈うつ状態〉の原因や問題点を広く探り、その改善したケースの変化の過程を分かりやすくマンガで表現した素晴らしい作品だ!しかし、もちろん読む上での注意点もあるので、長年〈うつ〉に苦しんできたわたし(さえき)の観点も加えて、本書に見受けられるいくつかの特徴を順に見てゆくことにしよう。



 多くの人に取材していて、読者に〈うつ〉患者の多様性に気づかせるのが『うつヌケ』の最大の特徴だ。それを一覧するために、本書に登場する〈うつ〉の人物17名とそのエピソードをかんたんにまとめてみた。特徴としては、優れたクリエイターである田中さん(以下敬称略)の知り合いの、クリエイティブで成功しているように見える人々が多く出てくる。ゆえに、それなりの長い間〈うつ〉に悩んでいる、一般の=平凡な読者には距離を感じさせてしまうかもしれない。その点は気にならないでもない。

» すべて読む


 山本貴光+吉川浩満『脳がわかれば心がわかるか――脳科学リテラシー養成講座』(太田出版、2016)は『心脳問題』(朝日出版社、2004)の増補改訂版である。本書を読んでいて思い出したことがある。
 
» すべて読む

 この雑誌を書評するのも、今回で三度目なのでもう前書きはいいだろう。本題に入ろう。
  » すべて読む


前編)より続く


「モランディを、独裁下で生きのこるための道を見出した美術家とみなすことは容易である。しかし彼は実際にはたんに生きのこる以上の事をしていたのである」(エドワード・ルーシー=スミス『1930年代の美術―不安の時代』岩波書店、1987年、76~77頁)。 
 

» すべて読む
tensyoku_cover

画像:amazonより


 最近、武藤洋二の『天職の運命―スターリンの夜を生きた芸術家たち』(みすず書房、2011年)を読み返している。
 昨年11月に新宿文藝シンジケートの読書会で亀山郁夫の『ロシア・アヴァンギャルド』(岩波新書、1996年)が課題図書に取り上げられたが、『天職の運命』の舞台はロシア・アヴァンギャルドの前衛的な芸術運動が終息に向かったスターリン独裁政権下のソヴィエトだ。1932年、ソ連共産党中央委員会が「社会主義リアリズム」を標榜すると、既存の芸術団体の自主的活動は政府によって禁止され、文学、音楽、美術、演劇、映画などあらゆる芸術の統制がはじまった。知識人だけでなく一般市民の生活も監視下にあった極限の時代を、文学者、詩人、画家、音楽家たちはいかに生きたのか。『天職の運命』はロシア文学・芸術を専門とする著者が、長年の資料精査を踏まえて独裁政権下の芸術家の生き様を追ったドキュメントである。註を一切省いた体裁は、研究書というよりもひとつの読み物としての質を備えており、歴史映画の大作数本分にも値するほどのボリュームがある。
 社会が危機的状況を迎えたときの芸術家の振る舞いというものを考えたくて本書を再読しているのだが、この時代の芸術家たちの選択は「抵抗/恭順」などという単純な二項対立では語ることができない。なにしろ、独裁者の気まぐれと報告書への帳尻合わせのために粛清の犠牲者の数が変動するような時代である。生きるために時局を読んで作風を変化させるにせよ、自分が信奉する芸術に殉じて餓死するにせよ、各々の芸術家が選んだ生き方はそれぞれにとって切実な選択だったのだと想像される。
 
 いくつかの例を挙げよう。本書に繰り返し登場するユダヤ系女性詩人のヴェーラ・インベルは、その都度の政治情勢に応じてカメレオンのように態度を変えた保守主義者の代表格である。

Vera_Inber_1
» すべて読む

pan_cover
岩佐なを『パンと、』(思潮社、2015年) 画像:amazonより


 2016年に入ってはやくも1ヶ月が経とうとしているのに、思い出されるのは何故か去年のことばかり。年明け最初のエントリにふさわしくない内容であるのは承知の上で、昨年読んで印象に残った本について書きたい。2015年は、川田絢音の『雁の世』と岩佐なをの『パンと、』に感銘を受けた。奇しくも2冊ともベテラン詩人による思潮社刊行の詩集である(川田は1940年生まれ、岩佐は1954年生まれ)。

 川田についてはまた別の機会に譲るとして、今回は岩佐なをの『パンと、』についての所感を記しておこうと思う。
» すべて読む
_SX345_BO1,204,203,200_

 「マガジン航」に日比嘉高『いま、大学で何が起こっているのか』(ひつじ書房、2015)への疑問から発した「大学は《自由》だから息苦しい」を寄稿した。けれども、ここでの文章ではいいたいことをいくつか削って綺麗に(?)整形してしまったので、言及すべきテーマがまだ少しばかり残っている。

 今回は追記として、私がどうしても脱力感を感じてしまった文章に対して、少しばかりコメントを加えてみたい。 » すべて読む


 En-Sophの編集者も書いていると一部で話題になっている(…ってこの枕、前回も使ったな)『Witchenkare』第六号を読んだ。小説・エッセイ・評論など37のコンテンツすべてを読んだので、前回と同様、そのうち3つを選んで少し感想を述べたい。
  » すべて読む

 
 岡田利規『エンジョイ・アワー・フリータイム』(白水社、2010・2)には三篇の戯曲が収められている。『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』(2009)、『フリータイム』(2008)、『エンジョイ』(2006)。何れも非正規雇用者たちが抱える問題を、物語的にではなく、グロテスクなまでに加工された、日常会話体の冗長な日本語表現によって提示しているものだ。以下では一番印象に残った戯曲『エンジョイ』にしぼって感想を記しておきたい。
  » すべて読む
(↑すごいピカチュウみたい)。
» すべて読む
NEW POST
関連本
CATEGORIES