ロングビーチのマリアさま


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【ロングビーチのマリアさま --- 04】
から続く


ふたたび長堤聖寺


日曜日の朝、いつものように早起きして海岸沿いの遊歩道を走り、その帰り、マリアさまに立ち寄った。今日は長堤聖寺で一般向けの行事があるはずだけど、どんな人が来るんだろう?朝の7時半をまわったあたりで、長堤聖寺の入り口に東南アジア系の男性がふたり腰かけて、世間話をしている。英語ではない。

 

入り口のドアは開いていて、中が見えた。思ったより明るい。話している男性たちに聞いてみた。



「一般向けの行事があるんですか?」

「あるよ。今日は阿弥陀経だけど、参加していく?」

「今日でなくて、また今度このお寺は、何語で話をするんですか?」

「ここは中国のお寺なんだ。でも中国語とベトナム語と英語で話してるよ」

「あなた方が話している言葉は、何語なんですか?」

「ベトナム語」


英語が通じるなら、一度来てもいいかもしれない。そう思いながら、長堤聖寺を後にした。 » すべて読む
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ロングビーチのマリアさま --- 03】から続く


新聞記事

長堤聖寺の場所にあったカルメル会修道院については、いくら調べても、結局よくわからなかった。あきらめて、サンタバーバラに移転したあとの彼女たちに関する情報を探した。サンタバーバラにもPoor Clare Colettine Nuns of Santa Barbaraという女子修道会があり、もしかしたらロングビーチから移転した修道院ではないかと思ったが、そうではなかった(彼女たちのウェブサイトに記された沿革には、1928年にカリフォルニア州オークランドで設立とあった)。 

その新聞記事は、上から何番目だっただろう。

サーチエンジンの検索結果に表示されたサイトのうち、カルメル会と関係ありそうなものを上から順に見てみたのだった。サンタバーバラの地域紙らしい、Santa Barbara Independent という新聞社の、2014年の記事だった。
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ロングビーチのマリアさま --- 02】から続く


代理聖母

その朝は、いつもよりビーチに行ったのが遅かった。前日の夜ひどく暑くて、よく眠れなかったのだ。海岸でランニングしたあとマリア像のところへ行ったのは、9時を回ったあたりだった。週末の朝で、私のほかにも何人かお参りしている人がいた。

 

「お参りする」といっても、実のところ、私はお祈りはしていない。キリスト教徒ではないから祈りの文句を知らないし、願い事をするのも何か違うかなと感じている。

像の前で瞑目すると、朝の空気の冷たさと肌に当たる陽射しの温もりを同時に感じ取ることができる。こういう時、生活の些細なことをあれこれ考えてもしょうがない。

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Long Beach08-Edit

ロングビーチのマリアさま --- 01】から続く


お参り

ある朝、海岸に延びる遊歩道をランニングしていると、散歩中だろうか、黄色い僧衣のお坊さんが歩いていた。目が合ってしまったので、ハロー、と話しかけた。

お坊さんは片言しか英語が話せない。
それでも、そのお坊さんが『お寺』の近くに住んでいることはわかった。
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Long Beach



ロングビーチのマリアさま

彼女をめぐる信仰の風景、あるいはささやかなスキャンダル

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