フード/レシピ/DIY

牛肉麺4a
改良型牛肉麺(調理、撮影、東間嶺。以下キャプチャ以外すべて同じ)

小説と牛肉麺


■ 一ヶ月ほど前から、ここエン-ソフ上にて《回花歌》という小説の連載がはじまっている。上原周子さんという、北海道で文化人類学の研究をやっている人が書いていて、二十回ほど続く予定の作品は、いまのところ二回目までが掲載されている。

■ 【とある大陸の西方に位置する街】を舞台にするその物語は、《牛肉麺屋》を営む人々を中心に展開する。《牛肉麺》とは何か?牛と、肉と、麺。漢字が読める人間なら、伝聞でもそれがどういうものであるかは想像できるだろうし、実際、想像(するだろう)通りのものだ。Googleで画像検索すると、下のような図が出て来る。
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『角切りトマトと生姜の冷やし豚しゃぶ丼』(クローズアップ)
(写真:『角切りトマトと生姜の冷やし豚しゃぶ丼』拡大)
 
あ、いいじゃん、そういうのは!ふて腐れた表情の首相が、自席で足をぶらぶらさせながらそんなふうに国会でヤジったのだとかいうニュースをわたしが目にした先月のある日、いまや過ぎ去っていってしまった今年の夏は、まだ健在だった。朝の仕事を終えて新宿から最寄り駅に戻り、スーパーに向かっていたわたしは、歩きスマホをしながら、前夜の珍事を厳しく追求/擁護するネット界のヒトビトの動向をボヤンと眺めつつ、今日の昼食は何にしようかと考えていた。頭上では太陽が激しく輝き、アスファルトの照り返しは熱波のように顔を焼くのだった。冷たく、さっぱりとした、ただし麺類以外のものを、わたしは食べたかった。
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IMG_4268
写真:【チェユクチョン(Deep frying)】作成、撮影、東間 嶺以下全て同じ



パク・ミョンは懐かしい香りを嗅いで、ふいに故郷の村の風景を思い出してしまった。チェユクチョンは、昔母が何度か作ってくれた料理だ。パク・ミョンは、江原道平康近くの、名前のない小さな村で生まれ育った。豚肉はまず党に供出しなければならず、本当に特別なときでなければ食べられなかった。祖父が解放戦争で戦死していて成分は申し分なかったが、両親ともに果樹園で働く労働者で、家は貧しかった。パク・ミョンが五歳のとき弟が生まれて、そのお祝いの席で生まれて初めてチェユクチョンを食べた。

(村上龍『半島を出よ (上)』、幻冬舎文庫、2007年、P293)
 

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