MOVIE&レビュー



世紀末、破滅の予言あったころ生きることなど楽勝だった ――本郷保長


 まだ十代の頃、世界がいつか滅亡するのだと信じてた。ノストラダムスの大予言がそのまま実際になるとは思っていなかったけれど、大きなことが起きるはずだという予感があった。それはほぼ十代が90年代であるという時代の空気感もあったのかもしれない。『新世紀エヴァンゲリオン』が放送される前から、僕は日本で内戦が起きたことのことを想像していた。今、生活している場所が戦場になるのではないか、その妄想は日常から逃れることのできる方法で、限りなく続く退屈な日常を破壊する希望になっていた。終わりなき日常は確実に終わる、そう信じて疑わなかった。
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ゴジラが鎌倉海岸から日本に再上陸した。
 その姿があまりに神々しく見え、ぼくは劇場でボロボロと泣いた。 

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 (C)2016 TOHO CO.,LTD.


【途絶えることのない「ゴジラ」シリーズ】

 庵野秀明監督の話題作「シン・ゴジラ」は、はっきりいってしまえば、諦めの映画である。もっといえば、祭りのあとですらある。それは庵野監督自身が一番知っているに違いない。
 庵野作品をほぼ観ていない私は、庵野監督の手法をどうこう語れる立場にない。しかしながら、初代「ゴジラ」を観れば、「シン・ゴジラ」がそれのオマージュとなっていることは明らかだろう。後者においても、ゴジラは凍結されたまま、死ぬことなく映画は終わる。歴代の「ゴジラ」においても、ゴジラは決して途絶えることがなかった。それが意味するものは何か。なぜ、ゴジラは続いてきたのか。映画「ゴジラ」シリーズを考えるとき、そこを素通りすることはできない。


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神秘の顕現、ドライヤー 『奇跡』


 カール・テオドール・ドライヤー監督の『奇跡』1955年)をdvdで再視聴した。厳格に構築された映像美には何度見ても驚かされるが、それにしても腑に落ちないのは、すべての伏線が一挙に回収される大団円的な結末である。 » すべて読む


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撮影:中島水緒、デジタル編集:東間嶺

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 文章を書く者はいつも、「自分はなぜ書くのか」という問いの周辺を堂々巡りして、その核となる部分を言い当てられずにいる。書く作業を「未来のわからなさ」に向けて自分を投げ出すようなものとするならば、テキストを書き直す行為は、季節を跨いでこの「わからなさ」と再びつきあうことの表明となる。本稿は、2014年製作の私家版テキスト(「恋愛映画」は誰のためにあるのか―「(500)日のサマー」における「真実」と「言葉」)を加筆修正し、若干の変奏を加えたものである。
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 今年のはじめ、デビッド・ボウイの突然の訃報が駆け巡ったとき、多くの追悼文のなかに「日本の少女漫画に与えた影響は大きい」という意味のコメントを目にした。少女漫画の美麗な男子キャラがボウイのルックスをモチーフにしていた、ということなんだろうか。ほかの意味もあるのかもしれないが、少女漫画に疎い僕にはよくわからない。ただ、同じように少女漫画が好みとする金髪碧眼のスターとして、ヘルムート・バーガーの名前を挙げてもそれほど的外れではないだろう、とは思う。

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 無沙汰してます。前回の更新から随分と間が空いてしまいました。

 さて、今回は以前ご紹介した『フルートベール駅で』の制作者だったフォレスト・ウィテカー繋がりという事で、『大統領の執事の涙』を紹介します(この作品で、ウィテカーは主演を務めています)。タイトルに「涙」と入ってますが、安っぽいメロドラマではありません。

 監督はリー・ダニエルズ。共演で印象的なのは、ウィテカー演じるセシル・ゲインズの妻役で、高名なトークショーの司会者でもあるオプラ・ウィンフリーです。「アメリカで最も影響力のある女性の一人」と言われる彼女ですが、演技も達者だったんですね。この『大統領の執事の涙』でも良い仕事をしています。他には、一昨年の夏に自殺してしまったロビン・ウィリアムズがアイゼンハワー大統領役で出演しています。

 内容をザクッと説明すると、「七人のアメリカ大統領に仕えたホワイトハウスの執事が黒人大統領の誕生を目にして涙するまでの物語」です。
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#43 -Cleaning(family grave)- Futaba,Fukushima
May. 14-15. 2014 
"Cleaning(family grave)" Futaba,Fukushima(撮影:東間 嶺以下全て同じ)

んたってあいつら二万円余計に貰ってるんだからな。12万だ。直前まで昂った調子で怒りを訴え続けていた初老の男がふいに表情を緩め、嘲るようにそう言うと、集会所にすし詰めで座って男と同じように怒ったり憤ったりしていた人々のあいだに、どっと、同調するような笑い声が広がった。人々と対峙して訴えを聞いていたスーツ姿の男たち数人は笑わなかったが、と言って諌めたりたしなめたりすることもせず、淡々と受け答えを続けていた。スクリーン上に展開されたその光景は、上映された全体の記録の中ではごく僅かな、殆ど一瞬の時間の出来事でしかなかったにも関わらず、わたしは、なんだか凄まじいもの、酷くむごたらしいものを観てしまったかのような、正視できないほどのいたたまれなさを覚えた。〔二万円〕、というむき出しの言葉と、それに呼応する笑い声が耳にへばりついて離れなかった。
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 今回紹介する『フルートベール駅で』も、前回取り上げた『それでも夜は明ける』と同様、実話が基になっています。この映画の事を知ったのは、資料として参照したWikipediaに、サミュエル・L・ジャクソンによる以下の発言が紹介されていたからです。


 
「『それでも夜は明ける』こそ、アメリカの映画界が人種差別に真摯に向き合おうとしていないことを証明している。もし、アフリカ系アメリカ人の監督が本作を監督したいといっても、アメリカの負の歴史を描くことにスタジオが難色を示すであろう~(中略)~過去の奴隷の解放を描いた本作よりも、現代における理不尽な黒人殺害事件を描いた『フルートベール駅で』を作ることの方が勇気のいることだ」

――Wikipedia「それでも夜は明ける」より、【著名人の反応】から抜粋。
 

 
 この映画は、2009年1月1日に起こった黒人青年射殺事件(参照:AFPニュース)が題材になっています。事件後には全米規模で抗議集会が開かれ、一部では暴動になるなど大きな騒動に発展しました。

 作品の構成は至ってシンプルです。まず、主人公のオスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)が射殺されるという事件のクライマックスが冒頭に置かれています。そして、その日の朝まで一気に時間を遡り、そこから《その時》までを時系列順に追っていきます。単純といえば単純ですが、冒頭のシーンがあまりにも衝撃的な為、観客はのっけから映画の世界に引き込まれてしまうでしょう。

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 日本では2014年、アメリカでは2013年に公開された英米合作映画です。監督は気鋭のスティーブ・マックイーンで、主人公をキウェテル・イジョフォーが演じました。アカデミー作品賞と、助演女優賞(ルピタ・ニョンゴ)で二冠を獲得、ゴールデングローブ賞など他にも受賞多数で、映画好きなら見ていなくても気になっていた人は多いのではないでしょうか。 » すべて読む
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