OPINION&Critic


 
 人はなぜ歌うのか。人は歌によって、どこに赴こうとするのか。


 木村敏は有名な「あいだ」の概念を説明する際、しばしば合奏の例を用いた[註1]。木村によると、理想的な合奏が成立するためには、音が合うということより以前に、まず「間」が合わなければならない。「間が合う」とは、演奏者一人ひとりの「内部」で鳴っている音楽が、同時に他の演奏者との「あいだ」の場所=「虚の空間」でも鳴っているような事態である。では、複数の演奏者が楽器音のタイミング(間)をピタリと合わせられるのはなぜか。相手が奏でた音を聴いてから自分の音を発するのでは、わずかとはいえどうしても遅れが生じてしまう。

 木村の考えはこうだ。演奏者はこれから演奏する音や休止を予期的に先取りし、そこに演奏行為を合わせていくことで周囲と音楽を成立させているのではないか。われわれが経験するのはいつも、すでに演奏された音楽の知覚もしくは記憶であるか、これから演奏する音楽の予期のどちらかである。つまり、タイミング(間)を合わせるために演奏者が意識を集中させるのは、自分の頭の中で鳴っている仮想的な旋律なのだ。


 表出された音ではなく、いまだ実現していない音に照準を合わすという考えは面白い。「理想的な合奏」という全体像に同期するために、個々の演奏者はおのれの内部へと意識を閉ざす必要があった。これは、楽器演奏だけでなく合唱の場にも当てはまることかもしれない。調和に向けて「個」と「全体」が溶け合い、演奏者(歌い手)の意識と身体が開きつつ閉じるような状態。矛盾に思える様態も具体例に即して考えれば腑に落ちるときがある。私が木村の合奏論から思い出したのは、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミュラーによるサウンド・インスタレーション作品40声のモテット》2001)だった。


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【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第69回概要
 
1.日時:2016年11月26日(土)18時〜20時
2.場所:マイスペース新宿区役所横店1号室
3.テーマ:塚原史『ダダ・シュルレアリスムの時代』(ちくま学芸文庫、2003)を読む。
4.概説:さえきかずひこ『2016年の今、ダダとは何なのか。』
https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3X3BjU1VnRWZiQUE/view?pageId=109661363927442511422
5.備考:FBイベントページ
https://www.facebook.com/events/641194676041064/


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 さて、こちらではご無沙汰ですね。

 枕として最初にどうでもいい話を。

 なんというか、二年くらい前からFacebookを始めてしまい、微妙な長さの書きたい欲はすべて向う側に吸収されている感があります。こうなると、いよいよ、En-Sophのようなブログ形式のウェブサイトの存在理由が不透明になっていくような。

 逆にいうと、ウェブで執筆を志すなら、余りFBなどやるものではありませんね。Twitterと違い、文字制限がないから、それなりに書くと満足してしまうのですよね。 でも、アソコって検索がポンコツだからほとんど公共性ないんですよね。

 ああいう場に入り浸るのも考えものです。

 さて、では本題。 
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Dada_in_Ultraman
画像出典:Wikipedia(Dada, an iconic character from the Ultra Series. His design draws inspiration from the art movement.)

まえがき

2016年はスイス・チューリヒ市でダダ運動が始まり、100年目の年である。このことから、スイス国内外でもダダをめぐる様々な催しが開かれ、それはわが国も―とくに東京が―例外ではなかった。しかし、100周年を記念するダダについての様々な催しに浮き足立ったり、スイス大使館が主催するダダ作品のコンペティションに嬉々として参加することは、ダダについていまあらためて考えることとは関係がない。なぜならアニバーサリーやコンペなどはダダの精神からは最も遠いものだからだ。というわけで、このように感じている者がこの100年目に、ダダとは何なのか3つの視点から考えてみよう。

以下で提示される3つの視点は、3つの年(1916、17、18年)にそれぞれ結びついている。第一次大戦下の中立都市で生じたダダの本質的な部分は、この3年間にはっきりと姿を表している。 » すべて読む





【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第68回概要
 
1.日時:2016年10月29日(土)18時〜20時
2.場所:マイスペース新宿区役所横店7号室
3.テーマ:青木保『「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー』(中央公論社、1990)を読む。
4.概説:荒木優太(@arishima_takeo)
⇒https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3d3JTckFRZXlYd0k/view?usp=sharing
5.備考:FBイベントページ
https://www.facebook.com/events/1217924484925102/


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【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第67回概要
 
1.日時:2016年9月24日(土)18時〜20時
2.場所:マイスペース新宿区役所横店7号室
3.テーマ:田中 俊之『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA、2015)を読む。
4.概説:男『は』つらいのか、男『が』つらいのか、あるいは男『も』つらいのか?(東間嶺)
https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3d3JTckFRZXlYd0k/view?usp=sharing
5.備考:FBイベントページ
https://www.facebook.com/events/1150203831689062/


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【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第65回概要
 
1.日時:2016年7月23日(土)18時〜20時
2.場所:マイスペース新宿区役所横店2号室
3.テーマ:テクタイル『触楽入門』を読む。
4.概説:荒木優太【テクタイル『触楽入門』に触れる。】
 ⇒https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3LWo3N3lNa2szUnc/view?usp=sharing
 5.備考:FBイベントページ

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【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第64回概要
 
1.日時:2016年6月25日(土)18時〜20時
2.場所:マイスペース新宿区役所横店7号室
3.テーマ:ニコラス・G・カー『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』(2010年、青土社)を読む。
4.概説:新宅睦仁【ネットでバカにならないために、あるいはための。】
 ⇒https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3Q1ZXMXZ3d2k3MmM/view?usp=sharing
 5.備考:FBイベントページ

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【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第63回概要
 
1.日時:2016年5月28日(土)18時〜20時
2.場所:マイスペース新宿区役所横店1号室
3.テーマ:高木仁三郎『巨大事故の時代』(弘文堂、1989)を読む
4.概説:東間嶺【巨大テクノロジーは〈死の文化〉か?CP(=Catastrophic potential)と社会の『選択』】
https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3ak4xWTFXRGlVWXM/view
5.備考:FBイベントページ
https://www.facebook.com/events/1755360661342812/

 

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201507_aichi_omote 201507_aichi_ura

 先日、「あいちトリエンナーレ2016」の3会場(名古屋、岡崎、豊橋)を12日の小旅行で巡った。豊橋会場の小林耕平、岡崎会場のハッサン・ハーン、名古屋・長者町会場の今村文など、印象に残った展示はいくつかあったが、ここでは豊橋会場の水上ビルで見たラウラ・リマの《フーガ》について雑感を記しておきたい。


 水上ビルとは豊橋駅付近から約800mに渡り複数の建物が軒並み連ねる古いアーケード商店街のこと。ラウラ・リマの《フーガ》は、この商店街の中にある4階建ての狭小ビルを使ったインスタレーションで、100羽もの小鳥が建物中に放し飼いにされている。訪れた人はこの「小鳥屋敷」を探索することが出来るのだが、もちろん小鳥に触ったり無闇に近づいたりする行為は禁止だ。小鳥たちを驚かさないように、金網を張り巡らした入口から二重のドアを経て室内に入ると、さっそく桜色のくちばしを持つ愛らしいブンチョウがつがいで迎え出てくれた。

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