【幸福否定の研究とは?】


勉強するために机に向かおうとすると、
掃除などの他の事をしたくなったり、娯楽に耽りたくなる。
自分の進歩に関係する事は、実行することが難しく、“時間潰し”
は何時間でも苦もなくできてしまう。
自らを“幸福にしよう”、"進歩、成長させよう”と思う反面、
“幸福”や“進歩”から遠ざける行動をとってしまう、人間の心のしくみに関する研究の紹介。


~不思議な患者さんたち~

次の例も10年以上前に経験した患者さんの例の紹介です。(注1)

20代で精神分裂病と診断された(注2)40代の男性は、うつ症状で休職、復職を
繰り返していました。うつ状態で何度目かの休職中に、あと一カ月で復職しないと
仕事を辞めないといけない、と、後がない状態でご家族に連れられて来院しました。

数回の施術で、思ったより早く改善がはじまり、
約2週間後には動けるようになり、一ヶ月後には無事に復職をしました。

精神分裂病という診断も20年前の診断なので、
もう一度病院を変えて診断する事になりました。、
予想通り、精神分裂病ではないだろう、という事になり、。
ご家族や親せきの方々にもようやく理解をしてもらえた、
と喜んでいました。

私も、経験も浅かったので
予想以上に早く改善して良かった、
仕事を辞めずに済んで良かった、
これでしばらくは普通に働けるだろう、と思っていました。

ところが、もう大丈夫だろうと思った数ヵ月後から問題が起き始めます。

会社の鍵を無くしたり、書類を紛失したりと何回かトラブルを起こし、
あっさり会社をやめてしまったのです。

幸福否定をしらなかった私も、健康になった途端に会社を辞めてしまうとは
どういうことだろう?と唖然としたのを覚えています。

ここで、

①病気で苦しんでいた時には、よほど頭の働きが悪いにも
    関わらず紛失などのトラブルはなかったこと

②致命的なトラブルではなく(注3)、始末書程度の
トラブルなのに自ら会社を辞めてしまったこと

と不思議な点が2点あります。

①のような症状は、紛失するものが限定されるという特徴があります。

この場合は、"会社"、"ほどほどに重要"という条件に当てはまるものだけ、
紛失(厳密には置いた場所の記憶を自ら消してしまう。
置いた時はしっかり片づけているので、たいていは引き出しの中などから出てくる)
することになり、重要度の低いものは対象になりません。

また、②のように、休職、復職を繰り返していた20年では、
自ら会社を辞めるような事は一度もなかったのに、
始末書で辞めてしまうのは、どういう基準なのだろう?と、
傍から見ると理解できない事が起こってきます。

この患者さんは、その後数年に渡り(注4)、うつ症状に関しては再発せず、
就職しては辞める、という事を繰り返す事になります。


(続く)


注1:プライバシー保護のため細部を変えさせて頂きます。

注2:私は医師ではないので診断する立場ではありませんが、
休職しながらも20年仕事を続け、普通の会話ができる(話の筋が通る)ので、
個人的には精神分裂病という診断は疑問です。
もし、本当の精神分裂病であれば、簡単に寛解するものではないので、
私の施術で良くなるという事もなかったと推測します。
但し、普通のうつ病の患者さんとも違うので、何らかの
人格的な問題は抱えていると思われます。

注3:幸福否定で起きる紛失の場合は、置いた場所を忘れる事が多いので、
後で出てくる事が多く、この例も結果としては社内で慌てたというレベルで、
致命的な問題にはなっていません。


注4:身内の方が来院していたので、後々の様子を聞くことができました。
"数年に渡り”というのは、身内の方が来なくなって以降はわからないので、
このような表現にしました。