卒業制作を終えた三月中頃、きしわぎは大学の就職科にひょっこり顔を出してみました。
「もう卒業間近だし、そろそろ就職とかも考えなくちゃだよね!」と、なんとなく考えていたのです。そこで、きしわぎは目玉が飛び出るくらい驚きました。なんということでしょう!大学から紹介されている求人はすべて終っているじゃありませんか!
きしわぎは、必死に卒業制作の作品を作っている間に、大学生が"就職"できるチャンスであったはずの"新卒"のタイミングを逃してしまいました。さて、どうすればいいんだろう?きしわぎは三月の透き通る八王子の夕焼けに頭を抱えました。
でも、ちょっと待てよ?きしわぎは思いました。いままで会社に入って働くことなんて考えたこともなかったので、自分が何を仕事にすればいいのか全然わからなかったのです。
「世の中のオトナはみんな働いてるけど、どうやって仕事を見つけてるんだろう?」
これが、きしわぎの心に湧いた、仕事についての初めての疑問でした。
大学の先生は、「卒業後はアルバイトをしながら制作を続けなさい」と言っていたので、それまではのん気に、バイトでもすればいっか!と、考えていたのです。
でも、コンビニなんかでバイトしながら製作するのは、時給も低いし給料も上がらないので、めっちゃ大変そうだなーとは思いました。
それにきしわぎは昔、「おいバイト!」と何もしていないのに(ちゃんと"働いて"はいましたよ!)、アルバイト先でいかつい社員さんに怒鳴られたことがあって、アルバイトの多くは人格を認められていないんじゃないか?と悲しく思い、そして同時にそんな人格を否定するような働かされ方をする世の中に、腹を立てていたのです。
そこで、きしわぎは思いました。
これはなあなあに流していい問題じゃないぞ、"なにを仕事にするか"は人生を左右するとてもとても大きな問題だ!
その頃、きしわぎは大学の近くに仲間と大勢でアトリエを借りて、みんなでワイワイ、ガヤガヤ、と楽しく生活していたので、あまり無職であることを不安に感じたりせずにすみました。
それに、年上の先輩もたくさん一緒にいたので、いろいろな疑問を聞いてみることも出来ました。とりあえず、きしわぎはおじいちゃんから卒業祝いに貰ったお金で、しばらくニートになって、社会と会社を、"見たり聞いたり考えたり"してみようと思ったのです。
そして、みんなもそんなきしわぎを“ニーティスト”として暖かく迎え入れてくれました!
というわけで、これからきしわぎが、いろいろと仕事を探す七転八倒の日々が始まったのです。ここでは、それらの体験と、その時々に思ったことを書いていくつもりです。
プロローグはこれでおしまい。
そんじゃーね!