いわゆるひとつのアラサーである。
個人情報を晒せば、今年で29歳。
二十代も終わりに近づいてきた。
よし、本田健の『20代にしておきたい17のこと』(だいわ文庫)を読むしかない。
とりあえず、そういうことにしてみる。
著者の公式サイトの名前は「幸せな小金持ちになるホームページ」。
金持ちではない。まさか大金持ちではもっとない。
小金持ち。
そう、人は小金持ちでなければならない。あえてそういうことにしてみる。
本田氏のホームページの幸せな小金持ちの定義によると、小金持ちは資産規模で1億、年収3000万とある。これが小金持ちの数字らしい。年に3000万稼いでも、それでもまだ我々は小金持ちでしかない。
ということは、それ以上のレベルであろう金持ちへのサクセスは果てしなく遠そうである。
だからこそ、あえて小金持ちを目指せ。金持ちの前に、小金持ち。
しかし、この2012年に生きる我ら野田JAPANのアラサーなどに小金持ちなど一千万年、いや一億万年早そうである。
しかし、『20代にしておきたい17のこと』を読めば、もしかするともしかするかもしれない。特に「小金持ち」と『20代にしておきたい17のこと』の関連は見当たらないのだが、どちらも本田氏の推奨なのだ。可能性はありうるだろう。
アラサーから小金持ちへのランクアップ。
アメリカン・ドリームならぬ、アラサティン・ドリーム。
それを達成したとき、我々はもうアラサーではない。小金持ちなのだ。
ちなみに、小金持ちの字面は小金井に似ている。
さて、読む前にまず我々は『20代にしておきたい17のこと』を探さなければならない。
確か、我が家にあったはず。個人情報を晒せば、この郊外のUR団地の8階建ての8階の1LDKの我が寝室の無印良品の本棚に、それはあるはずなのだ。
私はそれを自ら購入したのではない。
親戚がくれたのだった。
「君にはこれをあげよう」
親戚はそう言って、私にそれを手渡した。
今思えば、『20代にしておきたい17のこと』という題名はいかにも親戚がアラサーに与えたがりそうな本である。油断していた。迂闊だった。まったく準備が足りなかった。この機会に、皆さんにも、注意を促したい。
しかし、そんなことはこの際どうでもいい。全然見つからない。全く見当たらないのだ。
私は幻想の親戚に『20代にしておきたい17のこと』をもらったのか、あるいは実在の親戚に幻想の『20代にしておきたい17のこと』をもらったのか。それさえも、わからなくなってきた。カバンの中も、机の中も、探したけれど見つからない。
とうとう井上陽水の歌声まで聴こえてきた。
こうなったらAmazonでポチるしかない。
そこで私はAmazonにアクセスする。
そして「なか身検索」により中身を多少読めることを知る。
求めていた『20代にしておきたい17のこと』の片鱗が今目の前に存在しているのだ。
まずは表紙だ。クリーム色の表紙に羅針盤が描かれている。シンボリックな意味を読み取るなら、この本があなたのこれからの人生の指針になるよ、そういうことなのだろうか。なんと頼もしいことだろう。
しかし、そんな安易なことがあるだろうか。いまどき、位置情報を知るには羅針盤ではない。スマホのGPS機能が当たり前である。
まさかこの羅針盤は本書のキーポイントになるのではないか。もしかすると自己啓発本を装った本格推理小説という場合もありえなくはないのだ。「羅針盤に注意せよ」。そんなメッセージなのかもしれない。このあたりは注意していきたい(Amazonでさらっと読んだ感じ、本格推理小説の可能性はきわめて低い)。
「はじめに」を読むと、どうやら本書は著者や成功した先人たち(30代より上だそう)のインタビューなどを素材に作られたようだ。このあたりは老害乙!と猛られても仕方ない導入部である。目次を眺める。そこには「20代にしておきたい17」のことが並んでいる。このあたりも(ry
とにかく「17」だ。16でも18でもない。
しておきたいことは「17」。
どうやら、本田氏は「17」が大好きなようで、他の著作にも『10代にしておきたい17のこと』、『30代にしておきたい17のこと』、『50代にしておきたい17のこと』など、一目瞭然、「17」のことがたいそうお気に入りらしい。
こんなに「17」のことが好きな人も昨今珍しい。
しかし、翻って省みれば、確かに我々は近年、いや近代以降「17」を軽視しすぎたのではないか。
小金持ちへのサクセスのためにはまずは「17」を見直してみる。
それこそがアラサーの使命にも思えてくるのだった。