みなさん初めまして。これを読んでいる方もエンソフのメンバーの方も殆どが「初めまして」なのでとにかく初めまして。私は2009年よりフランスに住んでおり、パリから電車で40分の郊外・セルジーという町の美術学校に通っています。
これから書こうとしていることは留学をめざすようになってから今に至るまでの経緯ですが、正直ブログで自分の過去を曝け出すのはちょっとどうかと思っていました。ただ、もし記事を書く目的が私にあるとすれば、現在の視点から過去を思い返した際、その節々の場所的・社会的・経済的環境etcが自分の思考・行動・表現にどんな影響を与えていたか、そして現在や未来のそれとどのように繋がるのかを把握することはフランスで美大生をしている以上、重要なんじゃろなと考えた点にあります。
この記事は、だから何よりも自分の為に書こうと思うのです。
とは言っても、多くの方に読んでいただければ幸いです。
2007年春。
フランス語は第二外国語として習っており、すでに中級くらいのレベルにはなっていた。しかし、学部を卒業してから2年たち、就職、一身上の都合により退職、その後東京の実家から離れずアルバイトやニートを行き来していた私にとって、海外正規留学はかなり勇気のいることだった。だいいち金がない。しかし何より、「自分の巣から出る」経験に乏しい。今足元に○百万の札束が落ちてたとしても、それで渡航、という訳にはいかなかった。考えれば考えるほど自分が臆病になっていくのを感じる。精神的な「脚力」がどんどん落ちていく気がしていた。このまま牡蠣のように実家の自室にへばりつき、水風呂になるまでぬるま湯に漬かり、フニャフニャになったまま終わるのかしら…。ウワァ嫌だ。でもどうしたらいいのかと、ぐるぐる考えてネッ トやなんかで「なんでもいいから何か」探してみるわけだが当然解決策など見つかるわけもなく、(ったりめーだ)考えすぎた頭は常にヒートアップ状態になってるから、真昼間から畳に突っ伏してフテ寝するなんてこともよくあった。隣の幼稚園では園児の歌声が聞こえていた。「そうさ、100%ゆ・う・き~」忍タマのテーマソングは私をとことん苦しめた。
今、ここから逃げ出したい。なにがなんでも逃げ出したい。しかしどんなに逃げても自分から逃げ出すことはできないのだ。思い込みであっても一度目的を意識した以上、実現するためには一個一個条件をクリアしていかないといけない。2/3以上がコンクリートで固まったような脳みその残りで必死に考えた。
今暮らしている場所から、できるだけ極端に環境を変える。
同時に金を稼ぐ。
この2つの条件をクリアする必要があった。そこで出た結論が、「山小屋でバイト。」
山小屋バイトを専門に扱うサイトを探しあて、エージェントの人に相談。関東のある山小屋での住み込みが決まる。職場へ荷物を送り、最低限の登山用品を買いそろえる。しかしとんでもないことを始めようとしている気がしてきた。後悔が頭を押し寄せる。ぐわー。しかし職場へは既に行きますと言ってしまった。行くしかない。今回行かなければ、山どころか留学なんてできるわけがない。このままじゃ一生、本当に「後悔」する。
夏。某日早朝、中央線下り列車に乗って1時間半、その後車で30分ほどかけて山の麓にたどりついた。そこからは1人で登るしかなかった。標識もあまりなく、ちぎれそうなロープだけがかかっているような道もあり、とても初心者向けではなかった。でも怖いというより、必死だった。「日が暮れる前に小屋にたどり着かなければ!」標高 2400m上に位置する小屋まで、6時間位かけたと思う。運動不足の体で休み休み登りながら考えた、もしこれが飛行機なら、同じ時間がかかってどこまでいけるだろう?ドバイとか?そして飛行機とは比べ物にならない遅さで歩んでいる今から、何かが変わるんだろうか?いや、変わっていきますようにと、切望していた。
(つづく)
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フランス留学をめざした元ニート(1)
- 2012年04月24日 16:45
- フランス留学目指した元ニート