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接吻が卑屈の終わりだったから好きより先に行為があった

セックスが終わりうたた寝する前に微笑みあって飲みあう薬

「君の顔〝統失(トーシツ)〟らしくないよね」と僕らは確認し続けている

目標のない恋だから新しい間取りを見ても空想のまま

「就職課のお姉さんじゃ、ないんだよ」涙にぬれた履歴書が舞う

大学を辞めた理由が病だと言えずひたすら笑顔で返す

恋人を面接官に見立てても隠しきれない君はひとづま

新宿の道端に寝る人がおり僕の仕事は排除と清掃

美しい国の道にはゴミがない 俺が毎朝拾っているよ

三十と三十の前ちがうのは世間というより才能の無さ

これまでの絶望ばかり閉じ込めた光る電飾おれを笑うな

小説を書いても君は読まないで僕の瞳の癖を見つける

(統合失調症ではなかったら……)人生の仮定打ち消すリスパダール

ウィンドウ閉じるみたいに不幸まで消したら僕の体も消えた

からっぽの心になった月曜日 仕事を休む陰性症状

ネットすらない世界なら君の手を握ることさえ無いままに死ぬ

青春の時代がずれているのなら病の時代もずれて欲しい

「言わせときゃいいの、あなたと私には関係ないの共依存なんて」

夢を売る店をただよう掃除人 あんたの視界に俺はあるのか

手袋を取って洗浄してもなお尿の臭いは取れないままで

「出してすぐ冷たくなるの、どうしてよ!」恋のままではヒトになれない

完璧な計算ののち完璧な数のお釣りに秋刀魚は笑う

かぼちゃ入りカレーを煮込み準備した 青の時代の栄光のため

鉄の箱ごみを積み込み咳き込んで地下深くまで押す労働が

強くする僕の心を少しずつ 善い毎日はもうすぐのはず

大凶と思いこんでた 今ひけば末吉くらい出せると思う

じゃがいもの芽ばっかり煮て殺したい あいつはペプシまずそうに飲む

喘息が勲章となる 今までのほこりない日が多すぎたから

愛したい 初めて思う瞬間に君はメールを返さなかった

裏道に自転車を止め絶対に祝福されない旅を始める

(※2017年短歌研究新人賞応募作品)