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【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第77回概要
 
1.日時:2017年07月22日(土)18時30分〜20時30分
2.場所:マイスペース新宿区役所横店8号室
3.テーマ:ばるぼら+さやわか『僕たちのインターネット史』を読む。
4.座談会:『ぼくらが日本のインターネット史について知っていることはすべて間違っているらしい~とあるインターネット老人会』(東間嶺、さえきかずひこ、本郷保長、多田洋一他)

■ 上掲の通り、2017年7月22日土曜日に、第77回新宿文藝シンジケート 読書会が開かれました。同月に取り上げられたのは、ばるぼら+さやわか『僕たちのインターネット史』(亜紀書房、2017)。選書は東間嶺、

■ 夏休み企画ということで、冒頭はレジュメによる概説ではなく、今や『インターネット老人』と化した参加者たち複数による雑談座談会を行いました。冒頭に配した40分ほどの動画はその模様で、部屋の広さやテーブル位置もあって画角が非常に悪いですが、懐かしい人には懐かしい話題があれこれと飛び出しています。


インターネットと僕たちの過去/未来

■ 『インターネット』なる単語が、目新しく新奇で、「ナンジャソレ?」だった時代から、核ミサイルのボタンを押す権限を持った米国大統領が毎日毎日、「てめえ、やんのかコラ」「まじで我慢の限界」(大意)のような罵詈雑言を世界に向けて発表するほど一般性をもったスペースへと成長するまで、およそ二十年。Windows95発売時の大騒ぎ(空騒ぎ?)や、当時の世相を覚えている世代にとっては、信じ難い変化でしょう。『インターネット』とはパソコンを使ってする何かであり、『インターネット』で興奮しているのは一部の新しもの好きか変人である。そんな時代でした。

■ ばるぼら+さやわかの共著である当書は、そこからさらに二十年近く遡り、『パソコン』が『マイコン』だった【インターネット前史】の時代から総括を始めるのですが、ぼるぼらは、のっけから、2017年現在の状態に対し、以下のような言葉で疑義を示します。

「なんだかインターネットがおかしい」
「最近のインターネットのムードに違和感がある」
「なんでこんなふうになっちゃったんだろう?」

■ 「なんでこんなふうになっちゃったんだろう?」ばるぼらにそう嘆かせるのは、現況の、どのような有様なのか?要約すれば、それは、黎明期から二十数年を経て、結局のところ日本/世界におけるインターネットというインフラ=カルチャー=テクノロジーには、それが構想された当初に存在したネットワークの『思想』が反映されず、アクセス数やリーチの広さなど、市場経済の原理に毒された、ただの通信インフラ、コミュニケーションツールに成り下がっている状態、ということ。

■ 長くなるのでこのエントリでは詳細に立ち入りませんが、共著者である二人の嘆きは、【インターネット前史】の世代で、かつ、インターネットに通信インフラや便利なコミュニケーションツール以上の積極的な意味を見出そうとしてきた人なら、ある程度以上、共有できるのではないでしょうか。

■ 逆に言えば、そうした問題意識が無ければ、「ハ?(´A`)イミワカンネ」状態になるかもしれません。事実、会の参加者の中からも、「90年代後半からネットに入り浸っているが、当時は映像がすぐダウンロードできるブロードバンド環境が整備されるなんて予想もできなかった。だからむしろ、いまは予想以上の未来。不満はない」といった発言がありました。ここ最近、急速に広がりつつある、TwitterをはじめとしたSNSにかけられた期待---『動員の革命』等への失望も、似たものがありそうです。

■ いずれにしても、もはやインターネット抜きの世界経済、人々の大規模な経済活動は考えられません。「なんでこんなふうになっちゃったんだろう?」と嘆くばかりでなく、少しでもポジティブな要素を見つけて、それを活用してゆくほかはありません。さすれば明るい未来もおのずと開かれるでしょう。インターネット万歳!←(アホ


参考:いんたーねっとのれきし

※ 最後に、当書のような『言説史』ではなく、『現象史』を勉強したい方のために、某大学の講義動画を貼っておきます。ざっくりしてますが、通史的に抑えるには便利かと。