【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第72回概要
1.日時:2017年02月25日(土)18時〜20時2.場所:マイスペース新宿区役所横店2号室3.テーマ:加藤典洋『敗戦後論』を読む。
4.概説:荒木優太『敗戦後論超約』→https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3dFR5R2cyRVRVRTQ/view?pageId=109661363927442511422
◆ 上掲の通り、2017年2月25日土曜日に、第72回新宿文藝シンジケート 読書会が開かれました。選ばれたのは加藤典洋『敗戦後論』。選書は荒木優太(@arishima_takeo)です(※ レジュメへのリンクはこちらから→https://drive.google.com/file/d/0B5Z85xuBi5K3dFR5R2cyRVRVRTQ/view?pageId=109661363927442511422
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◆ 名著の誉れ高く、高橋哲哉との論争をはじめ既に数多の言説が費やされてきた当該図書を、いま改めて取り上げるのは何故か?荒木はふたつの理由を挙げます。
◆ ひとつめは連日世界を騒がせているアメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプです。「わたしたちは既に、日米安保の根本的見直しがいわれるポスト・オバマの世界に生きている」そのような世界、憲法改正さえ声高に言われるようになった時代に改めて日本とアメリカとの関係を考えるとき、アメリカとの関係を常に考え続けてきた加藤の著作はアクチュアルなものとして読むことができるのではないか。
◆ ふたつ目は、第68回で取り上げた青木保『戦後文化論の変容』で扱った「大きな主語(日本)でものごとを語ることの是非、語ってしまう人の性」について、テーマを政治にまで延長して考えることをしてみたい、ということ。ある事象を「~は~だから」という大きな主語で語る(日本人だから礼儀正しい、アメリカ人は陽気、など)ことは常に飛躍や錯誤を孕みますが、人はずっとその欲望を捨てられず、いまに至るまで繰り返し続けている。であるならば、言葉を使ってものを考える上で、それを避けることは不可能なのではないか?誤っているが、不可避という、この二重性に着目しながら、戦後の日本を大きな主語で語っている加藤の本を読んでみたい。
◆ 以上のような問題意識を元にした荒木のレクチャーは、過去、同書に寄せられた批判や賞賛をざっと振り返りながら簡潔にまとめられていて、難解と言われがちな内容を誰にもわかりやすいかたちで示すものでした。是非動画で御覧ください。
◆ レクを下敷きにしたディスカッションでは、やはりとっつきやすさの点からか、自国の戦死者をどう弔うか、国と個人の謝罪はいかにして行われるべきかなどの歴史認識、全体(国)と個(国民)の関係を中心に〈二重性〉への意見が出されていました。アメリカに住んでいた経験のある参加者も複数参加しており、「韓国人から似たような話しで詰め寄られたことがあり、個人としては返事ができないと言ったら納得していた」などの興味深いエピソードも披露されました。
◆ とかく忘却の激しい国民性だと指摘される日本人、日本社会(これも大きな主語!)ですが、日に日に激しくなる歴史修正主義のバックラッシュや、テレビにおける「日本スゴイ!」番組の増殖をみるにつけ、加藤が同書を問うた時代はまだまだ牧歌的だったな、とも思わされます。「ねじれ」の解消など、夢のまた夢でしょう。
※ 加藤氏本人も、Twitterで表情をくもらせております。
加藤典洋@ten_kato7:00NHKニュース。北朝鮮ミサイル発射後の会見でトランプ大統領は、アメリカはstands behind Japanと。このbehindって何だか日本のバック(庇護者)になると聞こえたが、これまでの米大統領、こんな言い方したかな。また日本もさせたかな。それとも聞き間違いかな?
2017/02/12 19:23:12