さて、「ススメ」の更新はとても久しぶりなわけだが、今回は、この沈黙に見合った超弩級の号外である。

 En-Sophに連載してきた在野研究列伝が加筆修正されて本として出版される。

 その名も、 『これからのエリック・ホッファーのために――在野研究者の生と心得』。

 東京書籍から刊行、全国の本屋に並ぶ。気になるお値段は、1500円(税込1620円)と、驚異の激安設定である。アマゾンでも予約が始まっている

 大学の人文社会系不要論が盛んな今日、企業や政府の「学問なんて役立たないでしょ?」でもなければ、大学人の「役立たないものを守れ!」でもない、オルタナティブな学問道を目指して。「これから」の道しるべを、在野の先達が伝える「在野研究の心得」として学ぶ。

 気になる人選&目次は以下の通りだ!
 


はじめに――これからのエリック・ホッファーのために

在野研究の心得


第一章 働きながら学問する

 どれくらい働いたらいいのか?――三浦つとむ(哲学・言語学)
 算数=ミステリーからの出発/マルクス・エンゲルスと出会う/在野仲間を探そう/論文「弁証法は言語の謎をとく」と時枝言語学/民科からの除名/「立ち読み」の達人/二者択一からの脱却
 
 終わりなき学びを生きる――谷川健一(民俗学) 
 文学青年から平凡社社員へ/民俗学への開眼/小説家デビュー/沖縄へ/地方研究者の困難/「小さきもの」へのまなざし/終わりなき学びを生きろ
 
  学歴は必要?――相沢忠洋(考古学)
 考古学との出会い/納豆売りの研究生活/岩宿遺跡の発見/専門家とのコミュニケーション/在野研究者の子供


第二章 寄生しながら学問する
 
 絶対に働きたくない――野村隈畔(哲学)
 野村隈畔とは?/徹底的な労働嫌い/倫理への興味/師匠としての岸本能武太/真っ暗闇の上京/ドツボの生活/絶対に働きたくない/波多野精一との因縁/死ぬ気で「ゴロゴロする/情死の最期/隈畔から学ぶべきこと二つ
 
 勝手にやって何が悪い?――原田大六(考古学)
 敗戦から考古学へ/勝手に考古学者宣言/師匠としての中山平次郎/言論封殺するアカデミシャン/コトとモノの相互補完/文化財自主管理/内助(というより外助)の功


第三章 女性と研究

 女性研究者という生き方――高群逸枝(女性史学)
 女教員時代/橋本憲三との恋愛と結婚/〈森の家〉生活の始まり/母性保護の要求/古代母系制の探究/後援会と助成金/在野研究者のアキレス
 
 大器晩成ス――吉野裕子(民俗学)
 大学志望を諦める/吉野英二との結婚/アラサー女子大生/アラフィフ扇研究者へ/性のタブーを突破する/アラ還の文学博士/有意義な「出会い」のために


第四章  自前メディアを立ち上げる

 自前メディアで言論を――大槻憲二(精神分析)
 フロイト受容に尽力す/大学教師を諦めてから/ウィリアム・モリス研究からの出発/精神分析と民俗学/「大学を自らおん出てから自由の言論をなすべし」/技術的学問と指導的学問/勝手に精神分析実践/トンデモに開き直る?
 
 評伝の天才――森銑三(書誌学・人物研究)
 地元図書館の臨時雇い/教師生活と『小さな星』/編纂所に就職/三古会と『伝記』/情けは人のためならず/戦前から戦後へ
 
 言葉を造る――平岩米吉(動物学)
 珠から動物学研究者へ/メディアからメディアへ/「動物文学」とは何か?/〈会〉の結成/科学と芸術、動物と文学/平易志向
 
 
第五章 政治と学問と
 
 政治と研究――赤松啓介(民俗学)
 〈非常民〉民俗学の発明/高い流動性/民俗学入門、左翼入門/研究者の階級性/統制された研究計画を目指して/収監時代/インテリに対する不信/未来の母系複婚制/「本当に学ぶことができる人びと」
 
 市民社会のなかで考える――小阪修平(哲学)
 なぜ全共闘か?/三島由紀夫との討論/全共闘世代の転向/フリーター生活へ/塾講師という転機/廣松渉の寺子屋塾/同人誌『ことがら』の編集/市民社会という場所/知が大衆化した社会のなかで


第六章 教育を拡げる
 
 「野」の教育法――三沢勝衛(地理学)
 地元に根づく研究者/中学校教員時代/寺田寅彦に相談する/地理学と教育/「野外」教室/「風土」とは大地と大気の接触面/教師の優位性
 
 領域を飛びわたれ――小室直樹(社会科学)
 目指せ第二のノーベル賞学者/各分野の学者に弟子入り/パーソンズの構造‐機能分析/ルンペン学者の誕生/領域を横断せよ/大学の価値とは役立たない価値/アカデミズムからジャーナリズムへ/インターディシプリナリーの条件


第七章 何処であっても、何があっても
 
 好奇心が闊歩する――南方熊楠(民俗学・博物学・粘菌研究)
 前歯と愛国/学校嫌いの勉強大好き/単身アメリカ留学へ/『ネイチャー』に寄稿する/知の翻訳/「文士」として生きる/熊野の自然で粘菌研究/書物を超える好奇心

 旅立つことを恐れない――橋本梧郎(植物学)
 ブラジルへの移民政策/小使い兼校長兼事務員/栗原自然科学研究所に所属/ブラジル植物探検史/在野研究の先達


あとがき――私のことについて、あるいは、〈存在へのあがき〉について


 三浦つとむ、谷川健一、相沢忠洋、野村隈畔、原田大六、高群逸枝、吉野裕子、大槻憲二、森銑三、平岩米吉、赤松啓介、小阪修平、三沢勝衛、小室直樹、南方熊楠、橋本梧郎。

 哲学、民俗学、考古学、地理学など多分野にまたがる研究者全16人が、時代と地域を超えて一同に揃った、アベンジャーズ型書物である(ハリウッドよ、これが研究だッ!!)。

 そして、本書用に抽出した「在野研究の心得」もここで一挙公開。ことの詳細は実物をめくるべし!

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