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写真:汚染水浄化設備群と処理水貯蔵タンクの山で、軍事施設か港湾の石油基地のごとく変貌を遂げた最近の福島第一原発。(© Google Maps:キャプチャ&補正=東間 嶺)

の噂も75日、という諺が、ある。諺、というもの自体が我が国では既に死につつあるのかもしれないが、とりあえず、そんな諺が、ある。ひとつの季節が終われば、どのような風聞であっても自然に消えゆくという内容だが、その時間感覚、タイムなスパンの意識は、現今の世界においては、あらゆる意味で妥当性を失っている。

れは、この世にまだインターネットという恐ろしい/素晴らしい情報インフラが無く、さらに、【炎上】という言葉が、文字通り【火が燃え上がること。特に、大きな建造物が火事で焼けること。(goo辞書)】だった時代の話だ。高度情報化社会が日々猛烈に高度化している2015年、【炎上】の勢いと、鎮火(忘却)のスピードは、季節どころか1日刻みで推移する。

なたは、国立競技場でイスラム国と佐野研二郎さんとピケティが在日でラッスンゴレライを8.6秒踊ったルミネのCMとクソコラグランプリのサインコサインを、覚えていますか?つまり、そういうことだ。


未然のカタストロフと『ダカラ感』

◆ きょう、発災から4年と7ヶ月を迎えた福島第一原発事故に関するニュースも、今や同じ惨状を示している。わたしはこの場で3年前から似たようなことを折にふれて書いているけれど、その時々と比べても、特別な活動家や被災地に関係性を持つ人以外、良いも悪いも、事故に関連する情報への反応は殆ど無きに等しくなっているように感じられる。

◆ 六号線が開通しようが、太平洋に汚染水が漏れ出ようが、避難計画の整備が曖昧なまま各地で再稼働が進もうが、敷地の断層が活断層ではないと分かろうが、なにもかも全て「あ、そう、だから?」で終わりである。東浩紀が言うところの『ダカラ感』が半端ではない。世の中は、それどころではないのだ。TPPとかSEALsとか、『戦争』法案とか、『戦争』法案とか、『戦争』法案とか、『戦争』法案とか、で大変なのだ。国会前で叫ぶ内容も、いつのまにかそちらへと変化しているのだ。

◆ 最近では、なんと内部被曝と外部被曝の区別さえつかない人が5割近くもいるというあまりにも衝撃的な調査結果まで飛び出して出てくる始末だ。


◆ ある意味で、それはポジティブな状態の反映だとも言える。震災直後に起きた情報パニックのように、多くの人たちが四六時中ずっと地震や津波、原発(というか、被曝)のことばかり考えていたり、関連ニュースを血まなこで追う必要もない平穏な状態が実現されているというのは、基本的には喜ばしいことだ。カタストロフは、訪れなかった。メルトダウンした核燃料を管理するための種々様々なトラブルを抱えつつも、収束作業は進展しているし、自治体や住民の帰還に対する態度も、鮮明になってきた。総体として、事態は改善に向かい続けている。

◆ わたしにしたところで、もっとも感度が高かった時期に比べれば、情報量も記憶量も、どころか関心量まで、全てが衰えている。食事から年間の実効線量を導き出す計算式なんか、すっかり忘れてしまった。

◆ しかし、だからと言って、前述のように『だから?』で全てが片付けられるかのような現状が、あれだけの大事故を経験した国の主権者として、知的にも倫理的にも、望ましいはずがない。意欲も記憶も、薄れゆくのは必然であり、仕方がないかもしれないが、「仕方がない、以上!」で抗うのを諦め、肩をすくめることが最善であるはずもない。悲しいけどこれ、戦争現実なのよね所詮、ごまめの歯軋りと開き直るのは、リアリストというより怠惰な現状追認の正当化に過ぎない。


素人が、『知ろうとすること。』 

◆ あまりにも前置が長くなった。じゃあ、どうするのか?ということだ。今すぐ盗んだバイク(←古いよ)で薩摩川内市や伊方市に走りだし、再稼働反対と叫ぶ列に加わるのか、逆に、叫んでいる人々に殴りかかるのか。当たり前だが、違う。いや、やりたい方々はご自由にすれば良いが、どちらも、わたしには興味も関心も無い行動だ。

◆ 素人が、知ろうとすること。、インプットし続けること、情報へのアクセスを維持すること。それが当面実行可能なひとつの解であり、目標となる。能動的な態度を保ち続けることが、とりあえず、とても大事だ。無残なギャグを滑らせることも、とても大事だ。なぜか?それは自分で考えて下さい。


◆ 『知ろうと』するモチベーションは、知ろうとし続けることで維持される、と言うと意味不明だろうか。情報の摂取を続けていけば、大体の場合、対象への知識や関心は自然に維持される。幸い、Twitterのアカウントを調べれば、botまで含む多様な原発関連のニュース配信アカウントが無数に存在し、次から次へと新しい情報を流し続けている。

◆ このWNNで、今後わたしは、日々届けられるニュースを関心の程度によってクリッピングし、整理、記録していこうと思う。それは佐々木俊尚的キュレーションのように公益を目指すものではなく、まずもって私的な備忘録、メモ書きでしかない。ただ、蓄積を継続していく中で過去として振り返られたとき、なんらかの公共的な意味が発生することもあるだろう。使用するツイートは、下記リストにまとめてあるアカウントを参照し、埋め込みの形で引用する。興味がある方は、いずれかフォローして、二、三日に一度くらいチェックしてみるのも良いだろう。

『World Nuclear News』

◆ 今後、どの程度の頻度で更新できるかは流されてくるニュース次第だが、だいたい10日から隔週に1回程度のペースを目指したい。今回は、10/3~10/10を対象にした。では、さっそく3日のニュースから、採取をはじめよう。


World Nuclear News(WNN)、2015/10/03~10/10


◆ 大飯原発停止後では初の再稼働となった九州電力の川内原発。予定通り二号機も再稼働する。反対派は近隣の火山が噴火するリスクを根拠に停止を要求しているが、九州が壊滅するレベルの破局的噴火を持ちだしても説得力は薄い。それならまだ直下型地震や、同じPWR(加圧水型炉)でメルトダウン事故を起こしたスリーマイル島原発のようなケースを恐れるべきだし、避難計画の不備はさらに問題だ。現実には大したトラブルも無く動き続けるだろうが、それを怠ったまま運転するのは、確率論以前の倫理に関わる信頼をないがしろにすることで、許されない。


◆ 今も1Fでたびたび起きる汚染水の流出に関して、一昨年までのものを対象に住民が東電幹部を告発し、県警が書類送検した一件。事故後の収束作業にも関わるものなので、刑事罰を問うのは少し無理筋に思える。確かに、『公害犯罪処罰法違反』をみると、【過失犯)第三条  業務上必要な注意を怠り、工場又は事業場における事業活動に伴つて人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者】に該当するのだろうが、事故後の状況では、流出トラブルを完全に防ぐのはそもそも困難だ。検察は起訴するのだろうか?


◆ 日経の10月4日記事。経産省が高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に関する理解を得るため都内でシンポジウムを開催。順次国内8都市で開催とのこと。エネ庁の役人は、【「国民の意向を無視して決めることは一切ない」】などと言っているようだけど、この件に関しては国が強権的になる他、選択肢はないだろう。合意形成の努力自体は手続きやポーズとして重要だが、そんなことで決まるはずがないのは、過去の経緯からもあまりに明らか。重要なのは、立地の適格性を満たす場所が国内に果たしてあるのかどうか、だ。


◆ 川内原発に次いで再稼働するとみられている愛媛県の伊方原発三号機。伊方原発は活断層である中央構造線に隣接しているため、日本初の原発起訴が起こされて以降も反対派の起訴が繰り返されてきた場所だ(参照:伊方原発起訴)。

◆ 一号機は2017年に運転開始から40年を迎えるため、来年にも運転延長申請か廃炉の判断をするようだが、比較的新しい三号機は規制委の審査をクリアし、県、町共に再稼働の決議を採択した為、おそらく年内には動くことになるだろう(首相も、6日の原子力防災会議で「事故時は国が責任を持つ」と請け負った)。

◆ とはいえこの発電所、最近あれだけ国を上げて東海大地震~南海トラフがどうこうと騒いでいる以上、浜岡同様に全基廃炉の方向性を考えるのが自然ではないか。既に長く営業運転をしている一号基はじめ、帳簿上の採算は合っているだろう。無理やり動かすほどの価値があるとは到底思えない。


◆ 産経記事より。核燃料プールからの使用済み燃料取り出しに向け、一号基の建屋上部を覆ったパネルを取り外す工事が始まった。4年数ヶ月前、このパネルを取り付ける工事の開始は、ちょうど東電が『ふくいちライブカメラ』の運用を開始した時期と重なっていた。

◆殆ど静止画のように動かない画面の向こうで、じょじょにクリーム色のパネルに覆われてゆく破壊された建屋は、発電所の機能回復を象徴しているようにも感ぜられたものだった。いまとなっては、結局何のために取り付けたのかイマイチ分からない、高度なハリボテにしか見えないところが悲しい(放射性物質の飛散防止に役立ったのかもはっきりしないし、「やってる感の演出だ」「めくらましだ」という当時の批判もそこまで外れてはいないように思える)。

◆ 下記動画は、東電発表の設置経過記録。今でもなかなか胸に迫るものがある(屋根パネルの最終設置が終わったのはちょうど4年前の10月14日)。



◆ 殆ど自民党内唯一と言っても良い反原発派だった河野太郎氏が安倍内閣の行革担当相へ新しく就任。と同時に、これまで再三にわたって自党の原発政策を批判していたブログを閉鎖(リニューアル)。本人の弁によれば、安倍首相も長期スパンでは脱原発なのだから自分と方向性は同じであり、またメルマガ、Twitter、FBはそのまま残すとのこと。

◆ 反原発派からはさっそく『変節』批判が飛び出しているが、内閣の一員になった以上、現政権の原発維持推進政策を批判することはできないので、入閣自体を転向とみなされるのはやむを得ないだろう。【そこまでして大臣になりたかった?】かどうかは、今後の動向次第か。政権側の取り込みとしたらなぜ今?という疑問は湧く。何れにしても、仕事はしっかりして下さいね。


◆ 福島県内三病院における、乳幼児向けホールボディーカウンター(WBC)の0歳~12歳までの調査結果。体内から放射性セシウムが検出された児童はいない(検出限界値は50bq / kg)。

◆ 【原発事故後、子どもを対象した大規模な内部被ばく調査の結果が発表されたのは初めて】、【「(検査結果は)日常生活の中で放射性セシウムの摂取がほとんどないことを示している」】。県産食品を避けている家庭はなかったという。

◆ 調査の主体は、南相馬市からの内部被曝調査報告を積極に行ってきた坪倉正治医師が率いるグループ。4年半後の状況を、端的に示していると言えるだろう。

(以上、10/10まで、11日以降次回)