(撮影・編集/東間 嶺、以下すべて同じ)
ウツノウミカラ、キカンセヨ!censored 再開にあたって掲題の通り、中断していたうつ日記の 公開を2012年9月分より再開することにした。理由は二つあって、ひとつは志半ばで中断していたこの日記を読みものとして完結させたいという気持ちがあること、ふたつめはこれを再開することで、すこしでも精神疾患(うつ病など)をお持ちの読者の方々の慰安・勇気付けになればと願うからである。ちなみに筆者は2009年の夏に発病して以来、約5年にわたって現在もなおうつ病の治療中である。以前、この日記が中断された理由をいま明らかにすると、筆者の家族から、無断で各人についての記述を公開することはプライバシーの侵害にあたると抗議されたことにあり、現在よりも格段に症状が重かったわたしは、その声にうまく応じてコンテンツの軌道修正を図る余裕がなかったことにある。というわけで、今回タイトルに"censored" と加えて記しているのは、文字通り(自己)検閲済みという意味であり、検閲の方法は前述の該当部分を泣く泣く削除したり、伏せ字にしたことによる。筆者の 家族や親族、友人らについての生々しい描写が十全にできないことは残念だが、一億総インターネット接続時代の代償であることをご賢察頂ければ幸いである。それでは、お楽しみください。
さえき 拝
(2013年1月)
1月2日(無職157日目)
9時起床。朝食のうどんを済ませ、*とふたり、新宿駅から湘南新宿ラインで北上。群馬県の*の実家へ。*の***はまだ小さい(小1)ので、となりのトトロを観ながら晩ごはん。楽しい時間を過ごした。
1月3日(無職158日目)
9時起床。*の実家で朝食を済ませ、**の車で近所の諏訪神社へ参拝。帰宅してお昼、おやつ、夕食…。ううむ、あきらかに食べ過ぎ…。世田谷の自宅にかえり、風呂に入る前に体重計に乗ってみたらなんと83kgという未知なる領域に突入していた。これぞ正月太りである。*といろいろ話をしたところ、減量して体重は75kgくらいにしてほしい、タバコはできれば止めてほしい、就職はそのあとで良いじゃない、とのこと。ダイエットと禁煙を同時に行えるほど、わたしの意志は強くないと思わずにはいられない夜であった。
1月4日(無職159日目)10時起床。自宅で朝食(雑煮)を済ませ、井の頭線で吉祥寺へ。昼食のグラタンのあと、*がアウターを選んでくれていたが、気に入るものがなかったので、むりに買うのはやめる。*と別れ、国分寺~東村山経由で新所沢へ。駅前のパルコを冷やかしたあと、徒歩で実家に戻り、入浴後、**と夕食。夕食のあとは勝田吉太郎『アナーキスト ロシヤ革命の先駆』(社会思想社現代教養文庫)を読みながら、うたた寝に興じた。
1月5日(無職160日目)7時半起床。**といっしょに朝食。10時過ぎに**が車で出かけたのでひとりゴロゴロする。正午過ぎに**が帰宅。昼食は肉まん1.5個、餡まん0.5個に、ホットミルクとみそ汁。昼食後、すこし休んでから風呂掃除をする。14 時過ぎに外出。西武新宿線で花小金井の駅へ。東久留米のFさんのお宅にお邪魔して、新年初めてのロングトークuntil深夜。持参した CD(SAKEROCK『慰安旅行』、The Tony Hatch And Alan Tew Orchestra『Strings Go Latin』、Errol Garner『Misty』)も楽しんで頂けたようで何よりだった。
1月6日(無職161日目)どのように過ごしたのかまったく記憶がない…。*といっしょにテレビで、新しい大河ドラマ『八重の桜』の第一回を観たこと以外は思い出せないw
1月7日(無職162日目)
朝からまったくやる気がなく、午前中はほとんど寝て過ごす。久しぶりにひどくやる気がないのでびっくりした。生きていた記憶がない昨日ですらもう少しはやる気があったはずなのだが…。午後から入曽駅前に買い物に行った。キャベツ、大根、ニンジン、納豆、豆腐を買う。虚ろな気持ちで帰宅して、藤子不二雄A『まんが道』の2巻を読む。高校卒 業にパラレルしてまんが家をめざす満賀と才野がまぶしすぎて、無職32歳持病はうつ病が読むにはちと辛いのであった。が、夕方には読了し、*の指導を受け ながら、れんこんとわかめの酢の物ときのこと豆腐のみそ汁を作った。そんな一日。
1月8日(無職163日目)
昼ごはんに塩ラーメンを作って、*といっしょに食べた。午後2時過ぎに実家を出て、西武新宿線で新所沢の駅まで行く。駅前のみずほ銀行で健保の振込と*への家賃の振込をした。鯛焼きを食べながらドトールに入り、ケータイで無心に小説を書き進める。それにも飽きて、パルコに足を伸ばし、CDショップと書店で時間をつぶした。
再 度、新所沢の駅から電車に乗り、花小金井まで行く。駅の改札口で、Fさんと落ち合い、歩いて回転寿司へ。回転寿司で早めの夕食を済ませたあと、Fさんのお 宅にお邪魔し、死についてのロングトーク。ディスカッションに近くなってなかなか面白かった。死について長話をすることになるとは思ってもみなかったが、 深い話ができて、たいへん有り難く感じた夜になった。
1月9日(無職164日目)9時起床。午後2時半ころ実家を出て近所のスポーツジムへ久しぶりに行く。プールで一時間泳いだ。かえってきてからは、生松敬三『二十世紀思想渉猟』(岩波現代文庫)を読む。
**といっしょに夕食を済ませたあと、*のPCを借りて、短篇小説『ぬけがら』(http://www.en-soph.org/archives/22092273.html)の推敲と投稿を行う。ついつい集中して軽く3時間ほど経っていたのには驚いた。
1月10日(無職165日目)
9時起床。夕方、一時間ほど散歩。寒かった。
1月11日(無職166日目)
9時起床。西武新宿線、山手線を乗り継いで、品川の精神科へ。かえってきて、夕飯に汁粉を食べたが甘さ控え目過ぎた。
1月12日(無職167日目)
9時起床。*の車で狭山市立図書館へ行く。図書館で本を数冊借り、*と別れて狭山市の駅ビルに入っているタ リーズコーヒーで、森達也『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(ちくま文庫)を読む。そのあと狭山市駅前のぎょうざの満洲に入って、餃子定食を食 べ、一時間ほど歩いて帰宅。帰宅してからはしばらく関川夏央『白樺たちの大正』(文藝春秋)を読む。晩ごはんの支度を終えた母といっしょ に近所のスポーツジムへ行って、小一時間泳いだ。晩ごはんのあとも続けて『白樺たちの大正』を読み続ける。精神的には振るわなかったが、からだを動かすこ とでなんとかバランスをとれたように思える一日。
1月13日(無職168日目)
8時半起床。やる気がなく、夕方くらいまで寝たり起きたりをくりかえしていた。新所沢在住のNさんから、ツィッターで飲みのお誘いがあり、6時過ぎくらいに新所沢駅前の高山商店(立呑屋)へ行く。3時間ほど飲んでお開き。西尾維新についての話などした。
1月14日(無職169日目)
8時半起床。*の**回目の誕生日ではあるが、やる気がなく、夕方くらいまで寝たり起きたりをくりかえす。昼間はかなりの雪が降ったが、うれしくもなく、雪が止んだ後、きちんと溶けるかどうかを心配したりしていた。夜、突然の訃報。**はあすから急遽、大阪方面へ行くことになった。わたしは2日くらいひとりで過ごすことになりそう。
1月15日(無職170日目)8時半起床。昼過ぎに足下悪い中、**は出かけた。西宮に住む*の**が突然亡くなったのだが通夜には間に合わず、あすの葬儀に出てかえってくるらしい。夕 方から、近所のスポーツジムへ行って、一時間ほど泳いだ。帰宅してからは、なぜかひとりで延々とテレビを観てしまう。そんなことをしていると、宇都宮のYから電話があり、40分ほど近況などを交換した。実家で一人きりになるとは思っていなかったが、思ったほど解放感はないものである。
1月16日(無職171日目)
昼ごろ起床。テレビで録画した『シャーロック』というBBC(英国放送協会)のドラマを観る。もちろんコナン・ドイルのホー ムズシリーズを原作にしているが、舞台は現代のロンドン。90分の番組だったが、なかなか見応え十分で面白かった。脚本が優れているなと思い、ウェブで検 索すると脚本は賞をもらっていることも分かった。風呂を沸かし、白菜と油揚げのみそ汁を作って*のかえりを待つ。8時半ころ、*が葬儀から帰宅。*は一晩、北区にある*の家に泊まるらしい。『吉本隆明対談選』(講談社文芸文庫)を読んでいたら眠くなったので、寝た。
1月17日(無職172日目)昼ごろ起床。夕方、風呂を洗い、豚ロースをソテーし、白菜としめじと豆腐でみそ汁を作った。*が7時半ころ帰宅。*はもう一日、*の家に泊まることになった。
1月18日(無職173日目)
10時起床。夕方、近所のスーパーで買い物をする。酒、みかん、りんご、カレーのルウ、じゃがいも、玉ねぎを買って、実家の台所で特製カレーを作る。隠し味のカレーパウダー(タイ産)を入れすぎてかなり辛い味になったが、辛党の*は喜んで食べていた。夜、NHKでスコラ観る。30分の短い番組だが、濃密としか言い様のない映画音楽をめぐるプログラム。来週も楽しみだ。
1月19日(無職174日目)10時起床。自室の掃除をして昼過ぎから出かけた。西武新宿線で花小金井駅へ。花小金井駅前でFさんに車で拾ってもらい、Fさんのお宅にお邪魔して、ロングトーク。いつも通り、深夜まで。話は尽きない。有り難い関係である。
1月20日(無職175日目)
10時起床。実家の自室や廊下などの掃除をして夕方から出かけた。西武新宿線、池袋線、丸の内線を乗り継ぎ東京駅へ。八重洲北口近くの居酒屋で、岡山から上京されていたTさんを囲んで、東間くん、Sさんと飲む。Tさんを新幹線乗り場に見送ったあと、東間くん、Sさんと中央線で新宿に移動して、歌舞伎町で飲み直した。Tさんの頭の回転の早さに圧倒されてあまり話ができなかったが楽しい時間を過ごすことができて良かった。週末の読書会が楽しみである。
1月21日(無職176日目)8時半起床。一日中だらけて、ゴロゴロ暮らしていた記憶しかない!
1月22日(無職177日目)8時半起床。テレビを観たりしていた。特に記すべきことなし。
1月23日(無職178日目)8時起床。昼間、録画されたテレビ(西田幾太郎や般若心経についてのNHKの番組)を観たりしたあとにプールに行って一時間ほど泳いだ。夜、やる気が無くて困っている旨、*に電話した。実家滞在を1ヶ月延ばす旨も併せて伝えて、了承を得た。それにしても、最近のやる気の無さにはほとほと困っている。簡単に言えば、朝、目覚めた瞬間から何もしたくないのである。そしてやたら寝る。昼間であろう と、夕方であろうと隙あらば必ずうとうとしている。こんなだらしのない日があとどれだけ続くのだろうか。考えるだけで頭が痛い。やる気がなくても、とにかく行動せねばわずかなやる気さえ出てこないのは分かっているが、やはりできれば死んでしまいたいなという気持ちも意図せず沸き上がってきたりして、実に始末に負えないのであった(このへんで止めておこう。
1月24日(無職179日目)8時起床。午後、実家の近所のスポーツジムへ行って、プールで一時間ほど泳いだ。プールでは無心に泳げるときと、何かいろいろと考えてしまうときがあるが、幸いにも無心に泳げたので良かった。いつも必ず無心になるのはなかなか難しいが、それに挑戦するのもなかなか良いものである。夕 飯のあと、三島由紀夫の対談集『源泉の感情』(河手文庫)を読んでいたら眠くなったので、早めに布団を敷いて、寝てしまった。最近は気分的には落ち込んでいて、夜寝るのが唯一の楽しみみたいなところがある。あまり寝過ぎるのは良くないのだろうが、夜早めに寝る分には誰も文句を言わないので、これからも夜更かしを控えて、なるべく早めに就寝したい。
1月25日(無職180日目)8時起床。とうとう無職になってから半年が経過した。*が珍しく風邪でダウン。わたしはフィジカルな意味で は元気。午後、実家の近所のスポーツジムへ行って、プールで一時間ほど泳ぐ。精神的には理由の不明な妙な落ち込みがあった今週だが、寒さのせいもあるのか もしれない。死にたくなったり、将来に何の希望も抱けなくなるのはいくら味わっても辛いものだ。けれど、そういう辛さと上手く付き合っていかねばならな い。苦痛を飼い慣らすのはたやすいことではないのだが…。夜は久しぶりにPCを開き、短篇小説『ぬけがら』の 最終話をアップし、NHKでスコラ(坂本龍一音楽の学校)を観てから寝た。
1月26日(無職181日目)8時起床。昼過ぎ、外出。西武新宿線、山手線を乗り継いで、品川の精神科へ。日照時間が短い間は、症状の劇的な改善は望めないという予期していた主治医の見解を聞く。渋谷から京王井の頭線で自宅へ。*と正月ぶりに会う。しばらく話をしたあと、明大前駅から京王線で新宿へ。歌舞伎町の貸し会議室で、読書会。荒木さんの西尾維新についての発表を聞き、その後、出席したメンバーでディスカッション。読書会のあとは定例の飲み会。激安酒場で飲み食いし、23時過ぎに解散。久しぶりに終電車で実家に帰る。
1月27日(無職182日目)9時起床。一日中、布団の中でまるで病人のように、ゴロゴロしていた。夕食のため、あじのムニエルを作った。*は引き続き風邪でダウンしており、元気がなく、食事のとき以外は寝ているのであった。
1月28日(無職183日目)9時起床。食器を洗って、掃除機をかけて、味噌汁を作ったらもう昼だった。食事のあと、近所のスポーツジムへ行って、一時間ほど泳いだ。やる気のない一日だったが、水泳したことだけは自分を誉められそうだ。そういえば、*がインフルエンザA型に罹患していることが判明したが、わたしはバカなのでインフルエンザにはならないと思う。バカで良かった。
1月29日(無職184日目)8時起床。夕方、*といっしょに近所のスポーツジムへ行って、一時間ほど泳いだ。昨日に引き続き、やる気のない一日だったが、水泳したことだけは自分を誉められる。タミフルのお陰で、*のインフルエンザがかなり良くなっていることが判明した。薬の力は凄いのであった。
1月30日(無職185日目)9時起床。あぁ、もう1月も終わっていきますね。夕方、近所のスポーツジムへ行って、一時間ほど泳いだ。昨日、おとといに引き続き、やる気のない一日だったが、水泳したことだけは自分を誉められる(最近こればっか)。*のリクエストで夕飯に*が作ったカキフライを食べた。美味でありました。
1月31日(無職186日目)10時起床。NHKで放送したBBC 制作ドラマ『シャーロック』の影響で、コナン・ドイル『緋色の研究』(新潮文庫)を読む。夕方、近所のスポーツジムへ行って、一時間ほど泳ぐ。夜、ツィッターで、恋愛したアイドルの丸刈り謝罪動画が大いに話題を呼び、ついついタイムラインを延々と観てしまった。
(2013年2月へ続く)