以下は杏ゝ颯太と筆者(杏ゝ颯太)との間で行われた対談の記録である。
 杏ゝ颯太は早くも夏バテ中であることに注意されたし。


筆者(以下、筆):
こんにちは。今日はお忙しいところありがとうございます。早くも夏バテ中だそうで(笑)
杏ゝ颯太(以下、杏ゝ):こんにちは。そうなんですよ。やー暑い!
筆:最近なんか新たな発見とかありました?
杏ゝ:ええ、ありました、ありました。美について新たな発見が。
筆:具体的にお聞かせください。
杏ゝ:美とは、亀裂である。
筆:具体的にお聞かせください。

杏ゝ:
先日、友人にお前ってただの美人好きだろって言われたんですよ。で、確かにそれは間違っていない。僕は美人が好きです。でも、どこか自分の中で違和感があったんです。
筆:具体的にお聞かせください。
杏ゝ:僕はグラビアが好きではありません。なんというか、別に綺麗な顔なり胸なり尻なりには興味がないのです。つまり、美人が好きだと言ってもそれは顔立ちとかではないのです。
筆:では、何なのでしょうか?
杏ゝ:亀裂です。あるいは、窪み。僕は女の人の笑っている顔が好きなのですが、それは決して楽しそうにしているからだとか自分の言動によって笑ってくれたからだとかではないのです。でも、じゃあなんでって言われると自分でもよくわからなかった。
筆:笑窪ですね!
杏ゝ:まさにおっしゃる通りです。笑うことによって顔に窪みが生まれる。僕はそれを美と名付けたい。あるいは、眉間のしわ。
筆:眉間のしわ?
杏ゝ:僕はよくアダルトヴィデオを観ますが、結局何を観ているかと言うと、女の人の顔に亀裂が入る瞬間なんですよ。ハルカトミユキのハルカさんも歌っている最中は絶対に笑いませんが、物凄く顔を歪めて歌っていて、その顔が本当に美しい。
筆:なるほど。私は夏菜さんが好きなんですが、杏ゝさんはどうですか?
杏ゝ:僕も好きです。笑窪がたまりませんね。
筆:ところで、表題のモザイクって何ですか?
杏ゝ:ああ、アダルトヴィデオの修正のことです。
筆:もしや無修正派?
杏ゝ:いやいや、僕はモザイク派です。あらゆる穴にモザイクをかけてもらいたいぐらいの。穴の中に美はありませんから。
筆:静止画はやっぱり嫌いですか?
杏ゝ:必ずしもそういうわけでもありません。が、静止画はムラがありますね。
筆:具体的にお聞かせください。
杏ゝ:例えば、あるアイドルの素晴らしいグラビアがあるとします。しかしながら、その隣にまったく同じアイドルの酷いグラビアが並べられていたりする。あれは何なんですかね?
筆:うーん。
杏ゝ:グラビアでない例を一つ挙げると、早稲田実業から早稲田大学に進学し現在は日本ハムに在籍している斎藤佑樹がいますが、彼の写真って投球中の顎が上がっている瞬間を正面から撮ったものがかなり多いんです。もちろん、一試合に何百枚、何千枚と撮っていたらそういう写真が何枚か撮れてしまうことはある。でも、なんでそれをわざわざ載せるの?って思うわけです。馬鹿じゃあるまいし。
筆:確かにこの一枚がこれかよっていうのはありますよね。
杏ゝ:グラビアも同じで、なんでこの二枚を並べるのか。これを選んだやつはこの二枚を同じように素晴らしいと思っているのだろうか。もし、そうなら観る目がないので馬鹿だし、そうじゃないとしてもこれを並べてしまった時点で馬鹿です。
筆:どっちにしても馬鹿なんですね。まあ、あえて並べることで素晴らしい方を引き立てようとしてるんですかね。斎藤佑樹のケースは男の嫉妬でしょうか。ところで、杏ゝさんご自身は撮られることに興味はおありですか?
杏ゝ:少しあります。というか、撮られること自体に興味はないし、僕は映るべきではないとさえ思いますが、人が僕をどんな風に観ているのだろうということには関心があります。
筆:どうして、映るべきではないのでしょうか?
杏ゝ:美しくないからです。というか、僕の場合だと、酷さから美しさへというベクトルになりますよね。それが嫌だ。つまり、あらゆるものは潜在的に美しい、ゆえに僕も、あなたも、私たちも美しいのだみたいな話が嫌いなのです。僕は美しいものから酷さへと向かいたい。
筆:では、最後に、杏ゝさんにとってサッカーとは何でしょうか?
杏ゝ:僕にとってサッカーとは、最大でも四十五分しか観る集中力が持たないスポーツです。
筆:本日はお忙しいところありがとうございました。

(終)