皆様、こんばんは。杏ゝです。外伝で書いたように、ハルカトミユキのインストアライブに行ってきました。基本的に連載はこれでもかというぐらいに力みながら書いておりますが、今回はレポートということで少し力を抜いて書いてみようと思います。


…とは言っても、事細かに書くのは面倒なので個人的に書きたいことだけどんどん書いていきます。

 では、スタート。

 外伝で悩んでいたのは、サイン会で何を伝えるか/伝えないか、でした。結果だけ書くと、「よろしくお願いします」、「ありがとうございます」、「申し訳ないです」の三言だけ話して、あとはがっちりと握手をしました(予想に反して、ボーカルのハルカさんの方ががっしりとした手でした)。一言目と二言目は、サインの前と後に話した言葉でこれはすぐにわかると思います。三言目は、歌詞カードにサインをもらったのですが、直前にスタッフの方がインクが乾くまでは重ねないで下さいと再三アナウンスしていたにもかかわらず、ついうっかりもらうやいなや閉じてしまいまして、そしたらスタッフの方が後から書いてくれたミユキさんにそのインクが付いて汚れた箇所に上からハートマークでも書いてあげて下さいと言ってくれて、そのときにミユキさんに発した言葉です。ちなみに、ミユキさんはハートマークではなくスマイルマークを書いてくれました。本当にありがとうございました。あと、基本的にどこにでもサインを書いてもらえたので、持ってきていたマイミニうちわにサインを書いてもらおうかなと思ったのですが、わりと店内が暑くてすぐにでも扇ぎたい状況だったのでこちらは断念。インクが飛び散ると大変ですからね。ライブの方は、3rdEP収録の五曲から『かたくてやわらかい』を除く四曲でした(リハーサルで『長い待ち合わせ』)。まずは、『その日がきたら』。今作のリード曲です。ハルカトミユキの歌詞は基本的に一番二番という表現が似合わないのですが、二番のサビである「例えば君に聴こえないならこんな歌なんて燃えてしまえばいい。」という歌詞が大好きです。ライブでもここにピークを持ってきていて思わずうるっとしてしまいました。特に、「例えば」という表現がいいです。例えば…と切り出して挙げている例は一つだけなのですが、「例えば」と書くことによって他にもその一つと同程度の強い具体例をほのめかしながらなおかつ唯一例示した一つの具体例の強度を落としていない。つまり、幾つかあるうちから任意に例示しているんではなくて、絶対的な例を挙げている。それにもかかわらず、それは「例えば」である。絶対的な具体例の複数性。いや、すばらしいですね。二曲目は、『赤くぬれ』。表題からもわかるように「赤」を主題にした楽曲。個人的には、『未成年』『ナイフ』に通ずるテーマの曲です(これについては以前に書いたのでこちらをお読み下さい→「それでも。」http://blog.livedoor.jp/annedo0826sota/archives/1003549381.html)。三曲目は、『385』。基本的にハルカさんの歌詞には感情移入出来ないというか、安易にそこに自分を投影させてくれないところがあって、投影する前に正面から対峙してみたいと思わされる、あるいは、正面から向き合ってこいと訴えられることが多いのですが、この曲だけは例外的にものすごく自分の現状と重なる部分が多く、自分に置き換えて聴いてしまいます。ラストは、『青い夜更け』。ひたすら、他者に呼び掛けている祈りの歌。「ぐらりぐらり心臓を揺らす」、「ごろりごろり月が転がる」という表現が大好きです。EP全体についても幾つか。まず、歌詞カードが手書きになっています。で、パッと見るとすぐに幾つか書き間違えた箇所を上から塗りつぶしているのがわかります。ですが、塗りつぶしている箇所は決して無意識的な過失ではないです。絶対に。よく見てみると、すべてN(ん・な行)の音の近辺に集中しています。「なん●て」、「、●線路(せんろ)」、「赤く●塗れ(ぬれ)」、「そんな●ことばかり」、「そ●んなことばかり」。先程リンクを貼った文章は、もともと「ん」、「こども」なんかも絡めて書こうと思っていたのですが、上手くいかなくて、少し違う角度から書いたものでした。な行は、母音を取れば「ん」になります。「ん」とは、まさに母なしの音です。そして、福島遥にはこんな歌があります。 深いうみ・みどり色液体石鹸・んから始まる愛を教えて(「リキッドソープは泡立たない」『空中で平泳ぎ』)。このテーマについてはもう少しまとまれば単純な大人批判ではない形を取っていずれ連載で扱ってみたいです(三曲目の『かたくてやわらかい』も大いに関わってくるはずです)。そして、これは聴いていたら意識せずともわかりますが、EP全体(特に『かたくてやわらかい』)に「ひらく」という言葉(あるいは、それと同じニュアンスの言葉や表現)がものすごく多用されています(より正確に表現すれば、言葉の頻度以上の強い印象が嫌でも残ります)。また、塗りつぶしではなくて、唯一書いていない箇所の歌詞が「ひらいたままの心はとても痛いよ」で、これまた興味深いです。この「ひらく」というテーマについても以前にエロスという観点から少し書いたことがありました(こちら→「絶叫と言葉と沈黙と」http://blog.livedoor.jp/annedo0826sota/archives/1003844563.html)。

 以上、長くなりましたが、インストアライブとEPについての殴り書きでした。
 とにかく、ハルカトミユキについて文章を書き始めて以来自分が少し前に書いたテーマが次のライブやアルバムで前景化するということが毎回のように起こっています。本当に不思議なことですが。

 ではまた連載で。

 杏ゝ颯太