告知 

1日に発売された文芸創作誌【Witchenkare】に、【《辺境》の記憶】という短いテキストを寄稿しました。精神的、金銭的な余裕がある方は、是非ご一読下さい(Amazon
ウィッチンケア第5号チラシ(修正)


◆ 【Witchenkare】は、【踊る大捜査線】、【ごくせん】等をノベライズ化してきたフリーランス・エディターの多田洋一氏が個人編集し、年1回発行するインディペンデントな文芸作品集であり、多田氏が思うところあって選定したさまざまな書き手が、さまざまに〔いま書いてみたい〕と思ったテキストを寄稿している。氏曰く、〔新しい創作のきっかけとなる「試し」の場〕とのこと。

◆ 〔試し〕が一体どのような性質の行為なのかは、公式ブログにおける以下の発言で簡潔に表されている。



小誌に興味を持ってくださった方からよく言われるのが「○○さんが書いているんですね」というようなこと。はい!そうなんですよ!!と笑顔で答える私ですが、じつは心の中で「もうちょい踏み込んでください!」と願っていたりするのが常であります。「が」だけでなく「を」も気にしてもらえると、つまり「○○さんが○○を(あるいは○○について)書いているんですね」というふうに捉えていただけると、そこで初めて「ああ、これそういう本なんだ」とわかってもらえるのかも、と。

Witchenkare公式ブログ 2014/03/24 
 


◆ ○○に関する書き手として知られているはずの〔○○さん〕が、そうではないもの、思いもよらない〔○○〕について書くこと。意外性、というよりは飛躍、が〔試し〕のキーだ。即ち、〔が〕ではなく〔を〕に注目すること。

◆ その部分〔だけ〕があまりに分かりやすく、だから強調するのもわりと躊躇われるのだけど、今回の第5号に掲載されている作品で言えば、震災のときに官房長官をやっていたあのE氏が秋元康とAKBを褒めチギッているテキストが、もっとも〔飛躍〕としては分かりやすいかもしれない。

◆ わたし自身はそんな〔飛躍〕とは無縁というか、「あの○○さんが○○について!」なんてこと以前に、そもそも「○○さんが」という、確かなマルマル、固有名として認知される存在から相当どころではないくらい遠く隔たった人間なので、今回の寄稿は、ごくシンプルに、〔いま書いてみたいこと〕を書かせて頂いた。

◆ 書きたいままに書いたそれは、わたしがまだ多摩美術大学の学生だったとき所属していて、現在も人的な縁を持っている風変わりなゼミの、まあ、なんというか、個人的な思い出話、みたいなものだ。


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◆ 【文学特殊研究】という奇妙な名前を冠されたそのゼミは、一般大学における文芸創作講座に近い性格を持った、読み/書くことを実践する相互批評の〔場〕であり、造形表現の高等教育を施す機関の中ではかなり浮いた存在だったのだけど、この三月で指導を担当していた青野聰教授が定年になるのを機に、公式のカリキュラムとしては終了することとなった。

◆ ゼミでは年1回、ちょうど【Witchenkare】の出る三月に、学生やOBの(主に小説を集めた)作品集を発行していて、在学中わたしも編集長を務めたことがあったのだけど、当然ながらそれも今回で最終号となってしまった。【《辺境》の記憶】は、その最終号に寄稿するために構想した短い小説の仕上げと、ほぼ同時進行で書かれた。

いまわたしの手元には書き終えられた二万七千字弱の小説があって、まるで他人のもののように興味深くわたし自身に読み直されている。

◆ テキストは以上の一文から始まる。同じように、いまわたしの手元には書き終えられ文字が組まれた4000字弱のテキストが載った本があって、まるで他人のもののように興味深くわたし自身に読み直されている、のだった。

◆ ただの思い出話しならチラ裏やっとけと言われるかもしれないのだけど、わたしが院生になるまであれほど熱心に取り組んでいた《現代美術》を冷温停止させて〔ことば〕を書くようになり、いま〔ことば〕を書いている、例えばエン-ソフでこのエントリを書いている理由の決定的な部分は、ゼミの、《文学》の、〔特殊〕な〔研究〕の〔場〕へコミットして獲得した経験にあったから、その〔場〕が消滅するという状況に際し、〔場〕について〔公に〕書くことは、殆どいまのわたしがわたしであることのプレゼンテーション、みたいな性質を持つ。

◆ そもそも、どのようなチラシの裏でさえ、実のところそれは〔誰か〕に読まれるために書かれている。読まれるために書かれたものは捲られ、表に返され、人前に出されるべきであり、だから【《辺境》の記憶】はチラシの裏ではない希少な空間に書かれる場所を得ることとなったし、このエントリも書かれ、そして公開され、今後もされ続け、どれもこれも全てが、まるで他人のもののように興味深く未来のわたし自身に読み直されていくだろう。

…たぶん。

続く

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