2018年04月


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ロングビーチのチベットセンター


前編から続く)

死について


人間が生きているあいだ、意識と身体は分かちがたく結びついている。でもそれは別々のものなので、ある時点で分離することになるが、それが死だ。ダライラマは、その関係を馬と騎手に例えて説明する。意識は騎手で、身体は馬だ。乗馬するためには騎手は馬が必要だし、馬のほうも騎手がいなければ走れない。馬を下りた騎手は、また別の馬に乗って進んでいくが、それが転生だ。違う馬でも、乗っている騎手は同じだ。


意識と身体の離別はとても辛い。生まれた時から片時も離れたことがない自分の身体と自分の名前を手放すことになる。長い間共に過ごした家族や友人、大事な思い出、大切にしていた所持品ともお別れだ。でも自分が自分でいることを完全に止めることができるのは、死ぬ時くらいかもしれない。だからこそ思惟を深める機会にもなるのだろう。

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はじめに

仏教の勉強を始めて日が浅い今の時点で、こういうものを書いて公開するのが妥当なのかどうか自信がなかった。でも、何年勉強しても完璧な自信がつくとは思えないし、それだったら今の時点で考えていることを書いておいてもいいかもしれない。また、米国に住んでいることもあり、英語で仏教の勉強をする機会に恵まれているが、(難しい漢字の言葉が出てこないのはありがたいけど、どういう意味なのか想像がつかないパーリ語やチベット語の言葉が出てくるという苦労がある)英語で勉強した仏教の話を、日本語で書いてみたいとも思った。私の心の中にある。仏教はこういうもの、という日本文化の枠内でのイメージは、今英語で学んでいる仏教のイメージと違う。そのギャップを、少しでも埋められるかもしれない。
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【SBS】新宿文藝シンジケート読書会、第85回概要

 
1.日時:2018年03月24日(土)18時〜20時
2.場所: マイスペース新宿区役所横店8号室
3.テーマ:リュディガー・ザフランスキー『人間はどこまでグローバル化に耐えられるか』 (叢書・ウニベルシタス)を読む。
4.レジュメ作成:さえきかずひこ(@UtuboKazu)
5.備考:FBイベントページ


■ 上掲の通り、3月24日に行われた第85回新宿文藝シンジケート読書会はつつがなく終了しました。同月に取り上げられたのはリュディガー・ザフランスキー『人間はどこまでグローバル化に耐えられるか』 (叢書・ウニベルシタス)でした。参考までに以下、当日配布されたレジュメを掲載します(当日の雰囲気は、冒頭のPeriscope中継約30分でご確認下さい。さえきがレジュメをもとに解説しています)。
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〈不掲載三部作〉

「受賞のことば(原)」、二〇一五・一〇・一三。
「動物と天皇――田上孝一『環境と動物の倫理』と内田樹『街場の天皇論』」、二〇一七・一二・二六。
「小説のリバタリアニズム」、二〇一八・四・七。

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※注意。本稿は某文芸誌による、
・高橋源一郎『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』(集英社)
・いとうせいこう『小説禁止令に賛同する』(集英社)
・奥泉光『雪の階』(中央公論社)
を同時に書評せよ、という依頼に応えて執筆されたものだが、校了直前に文中にある「こどもだまし&おためごかし」という言葉を変更または削除しなければ掲載しないと言い渡された。私の主観では「こどもだまし」なのは事実なので、頷くことができず、結果、不掲載の憂き目にあってしまった。依然として依頼主に特に恨みをもっているわけではないが、せっかく書いたのだから多くの人に読んでもらいたく、ここに公開する。

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---『回花歌』梗概---
舞台は2000年代、とある大陸の西方にある街。"私"と家族は牛肉麺屋を営んでいる。街は、かつて核実験が行なわれていた土地のすぐ近くにあり、その影響を暗に示すような出来事が、家族の周囲ではいろいろと起きている。しかし、"私"と家族を含め、街の人々は核や原子力に対する正しい知識や情報を持たず、故に恐れを抱くこともない。彼らは宗教と自身の信仰心を大事にし、家族や親族、友達を大事にして生きている。「何かがおかしい」と感じられるような状況下でも、人々の生活は変わらずに続いてゆく。『回花歌』は、そんな物語である。
 

10---"伯父の申し出"より続く)

11--- "叔父"の家


店の前まで来ると兄と私、ライヒは店には戻らず父や母と別れ、そのまま二軒先にある叔父夫婦の店へ向かった。「今夜ハラブからインターネットで連絡が来るから、みんな来ないか」と叔父が誘ってくれたのである。ハラブは叔父夫婦の息子で兄と私の従弟にあたる。私達も久々にハラブと話したかったのでお邪魔することにした。

叔父がズボンのポケットから鍵を取りだして錠を開け店の中に入った。そのあとを叔母、兄、私、ライヒの順で一列に電気のついていない真っ暗な店内を進み、店の一番奥にある階段を上り二階の母屋へと向った。叔父が母屋に入って居間の電気をつけると、五人で上るにはあまりに細くて頼りない階段の足元まで灯りが届き、幾分ほっとした。
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