2016年02月

棚

その時に、その場所で---5】から続く
(本文、デジタル画像編集、構成/東間 嶺、以下すべて同じ)


1月1日(金) 未明 埼玉県越谷市


29日からあとは人と会う予定は入れていなかった。それまでも片手間に両親の家の掃除をしていたけれど、年末の3日間は掃除と片付けに専念した。

高齢者の住まいはどこでもこんな感じだと思うが、同じようなものが家の中のあちこちにばらばらに収納してあり、捨てるしかないような空き箱や古いプリント類が、手の届きやすい「一等地」を占領していた。いつか使うから、と適当な場所に放り込まれて、そのままになっているものも山ほどあった。捨ててもいいものは処分して、まだ使えそうなものは整理して収納し、父母が探すときに困らないように大きなラベルを貼った。

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上野原

その時に、その場所で---4】から続く
(本文、デジタル画像編集、構成/東間 嶺、以下すべて同じ)


12月26日(土) 昼 栃木県宇都宮市


父の兄弟が多いので、私にはずいぶんいとこがいる。でも私の住まいは海外で、親族が集まる葬式にも結婚式にも行かないので、彼らとはもう何年も会っていない。2~3年前、親戚のお葬式に出た私の父が、従姉のメールアドレスを聞いてきた。6歳年上の従姉で、子供のころはお正月に祖父母の家で会うのが楽しみだった。私は一緒に遊んでいるつもりだったけど、「面倒を見てもらって」いただけなのかもしれない。

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 持ち込みのハイボールを飲みながらウルフルズの『ええねん』を歌っていて、ふと昔テレビで見た音楽番組のあるシーンを思い出していた。出演者のミスチル・桜井和寿は、直前にウルフルズのトータス松本が歌った『ええねん』の感想を、絞り出すように司会のタモリにこう漏らしたのだ。

「『ええねん』を聞いていると、自分はなんでこんなに小難しく歌詞をこねくりまわして作ってるんだろうと思えてくる」
 
 細かい言い回しは違うかもしれないが、桜井が自嘲的にそう語っていたのをよく覚えている。

  ……因みに、この『ええねん』とは、様々な悩み・問題を並列的に配置して、必殺ワードの「ええねん」の連発で全てを笑い飛ばしてしまおうという実に爽快な歌である。
 

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ランプ

その時に、その場所で---3】から続く
(本文、デジタル画像編集、構成/東間 嶺、以下すべて同じ)


12月24日(木) 昼 埼玉県越谷市


物置に保管してあった古い持ち物の整理が終わったので両親の住まいの掃除に取りかかったが、昼食は市内に住んでいる古い友人と食べた。知り合ってから今年で40年になる。背が高くて色白で、目のぱっちりした彼女に、私はあこがれていた。別々の中学校に通ったけど、高校は同じだった。その友だちと、駅の近くのファミリーレストランへ行った。

初めて入ったそのレストランには、ランチのセットがある。質素なメニューで量もそんなに多くないが、普通においしいし値段は魅力的だ。平日の昼だからなのかもしれないが、店内はひとりで食事しているお年寄りや、おとなしい感じの女子高校生のグループが目立った。店員さんたちはその高校生たちよりほんの少し年上の、若い人が多かった。従業員募集の張り紙があり、外国人の方、歓迎します、と書いてある。

こういう時代の日本を、私はよく知らない。

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新宿ルミネ-3

その時に、その場所で---2】から続く
(本文、デジタル画像編集、構成/東間 嶺、以下すべて同じ)


12月22日(火) 昼 東京都世田谷区


静嘉堂文庫美術館へ行こうということになり、両親と3人で出かけた。両親の住まいの最寄駅から直通電車利用で、乗り換えなしで二子玉川まで行ける。乗車時間は長いけど、座ったままで行けるので楽ちんだ。両親はもう階段の上り下りはつらいので、彼らと出かけるときは私もいつも一緒に駅のエレベーター利用する。二子玉川の駅にもエレベーターがあったが、それはいつも私たちが利用する東武線や地下鉄のエレベーターと比べるとずいぶん大きかった。

大きいのには理由があった。
ベビーカーを押した母親が、とても多いのだ。

東武線のエレベーター利用者はお年寄り、ベビーカー、大きな荷物を持った乗客の比率が1:1:1くらいだが、二子玉川はベビーカーが圧倒的に多かった。

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 さて、「ススメ」の更新はとても久しぶりなわけだが、今回は、この沈黙に見合った超弩級の号外である。

 En-Sophに連載してきた在野研究列伝が加筆修正されて本として出版される。

 その名も、 『これからのエリック・ホッファーのために――在野研究者の生と心得』。

 東京書籍から刊行、全国の本屋に並ぶ。気になるお値段は、1500円(税込1620円)と、驚異の激安設定である。アマゾンでも予約が始まっている

 大学の人文社会系不要論が盛んな今日、企業や政府の「学問なんて役立たないでしょ?」でもなければ、大学人の「役立たないものを守れ!」でもない、オルタナティブな学問道を目指して。「これから」の道しるべを、在野の先達が伝える「在野研究の心得」として学ぶ。

 気になる人選&目次は以下の通りだ!
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恵比寿-1
Photo by Takashi Nakamura,  retouch by Ray To-ma

その時に、その場所で---1】から続く
(本文、デジタル画像編集、構成/東間 嶺、以下すべて同じ)


12月20日(日) 昼 東京都渋谷区

この日は母は用事で外出してしまい、父とふたりで山種美術館まででかけた。地下鉄の恵比寿の駅で降りて地上に出ると、私が覚えている恵比寿とはまったく別の光景が広がっていた。美術館までの地図をプリントして持参していたけど、東京のこのあたりの道は父がよく知っている。日曜日だったこともあり、駅から少し離れると交通量は少なくて静かだった。

村山華岳展を観に行ったのだが、同時代の画家たちの作品の展示もあり、わかりやすくてきれいな作品が多くて満足感があった。村山華岳の、描くことに精神性を見出す姿勢が印象的で、数年前に見たアントニオロペス展を思い出した。美術展はあまり混んでいなくて、父と一緒に見学するのにちょうどよかった。
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