2014年12月


ウツ-10
さえき近影【Portrait:Depressed patients(Saeki Utubo Kazuhiko)
(撮影・編集/東間 嶺、以下すべて同じ)


ウツノウミカラ、キカンセヨ!censored 再開にあたって  

掲題の通り、中断していたうつ日記の 公開を2012年9月分より再開することにした。理由は二つあって、ひとつは志半ばで中断していたこの日記を読みものとして完結させたいという気持ちがあること、ふたつめはこれを再開することで、すこしでも精神疾患(うつ病など)をお持ちの読者の方々の慰安・勇気付けになればと願うからである。ちなみに筆者は2009年の夏に発病して以来、約5年にわたって現在もなおうつ病の治療中である。

以前、この日記が中断された理由をいま明らかにすると、筆者の家族から、無断で各人についての記述を公開することはプライバシーの侵害にあたると抗議されたことにあり、現在よりも格段に症状が重かったわたしは、その声にうまく応じてコンテンツの軌道修正を図る余裕がなかったことにある。

というわけで、今回タイトルに"censored" と加えて記しているのは、文字通り(自己)検閲済みという意味であり、検閲の方法は前述の該当部分を泣く泣く削除したり、伏せ字にしたことによる。筆者の 家族や親族、友人らについての生々しい描写が十全にできないことは残念だが、一億総インターネット接続時代の代償であることをご賢察頂ければ幸いである。

それでは、お楽しみください。

さえき 拝



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 以下の短歌の成立過程について説明する。
 ここ数日間、私は福島遥歌集『空中で平泳ぎ』に収められた歌をそれぞれ〈 〉で括った2つのパートずつ、計6回に分けて個人ブログの方に打ち込むという試みを行った(リンク先を参照)。そして、毎回打ち込んだ後に打ち込み後歌=効果として1つのパートごとに短歌を1首もしくは2首作成した。
 これから読まれるものはそのような過程を経て産み出された歌である。

 杏ゝ颯太

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【ブータン国旗】 画像出典:Amazon(http://www.amazon.co.jp/dp/B002SXUFYI


その国に、何があるのか

《幸福の国》という軽薄なコピーで語られることの多いブータンという国に、幸福以外の何があるのだろう。8月も終わる頃、私の知人がフェイスブックでブータンについての記事をシェアした。それは仏教系の英文サイトに掲載された米国人ジャーナリスト、Madeline Drexlerのインタビュー記事だった。リサーチジャーナリストという肩書を持つ彼女はブータンを訪問し、今ではすっかり有名になったGross National Happiness (GNH、国民総幸福量)について記事を書いたのだという。

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"スイス、チューリッヒの床屋" (撮影:gato-gato-gato.) 
【引用】CCライブラリー http://cc-library.net/010003407_free-photo/


 スイスに来てそろそろ2年になろうとしている。人種差別・直接民主主義・徴兵制などのスイス事情について書くよう依頼されてこの文章を書いているが、率直に言ってこの2年はこちらの生活に慣れるのに精一杯で、スイスについて何かを知り得たと言うには程遠い状況と言わねばならない。またどれだけ多くの人がアメリカやフランスやドイツや中国ではなく、スイスに興味があるのか心許ない気もしている。でも逡巡しているだけでは何も始まらないので、自分の実体験を含めながらこちらの事情について素描を試みたいと思う。今回は1回目ということもあり、スイスという国の軽い紹介という形にしたい。

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(↑平岩由伎子著編『狼と生きて』、築地書館、57p、1998)

 平岩米吉(1897-1986)。ヨネキチ。動物学者。専門はイヌ科。「動物文学」という言葉を造り、雑誌『動物文学』を創刊し、動物研究の媒体を形成する。自宅に犬科生態研究所を構え、多くの野生動物を飼育。日本の狼研究の先達となる。主著は『犬の行動と心理』(池田書店、1976)、『狼――その生態と歴史』(動物文学会、1981)。その他多数。
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 みなさま、こんばんは。
 杏ゝ颯太です。
 
 2014年12月8日より個人ブログ(http://blog.livedoor.jp/annedo0826sota/)の方で《日記》を始めました。更新頻度や形式などはまだまだ手探りかつ流動的になっておりますが、色々と文体の実験も試みつつ書いてみたいと思っていますし、気まぐれで時々はこちらの方でも発表する予定です。

 というわけで、早速ですが、初回分の日記をどうぞ。
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#43 -Cleaning(family grave)- Futaba,Fukushima
May. 14-15. 2014 
"Cleaning(family grave)" Futaba,Fukushima(撮影:東間 嶺以下全て同じ)

んたってあいつら二万円余計に貰ってるんだからな。12万だ。直前まで昂った調子で怒りを訴え続けていた初老の男がふいに表情を緩め、嘲るようにそう言うと、集会所にすし詰めで座って男と同じように怒ったり憤ったりしていた人々のあいだに、どっと、同調するような笑い声が広がった。人々と対峙して訴えを聞いていたスーツ姿の男たち数人は笑わなかったが、と言って諌めたりたしなめたりすることもせず、淡々と受け答えを続けていた。スクリーン上に展開されたその光景は、上映された全体の記録の中ではごく僅かな、殆ど一瞬の時間の出来事でしかなかったにも関わらず、わたしは、なんだか凄まじいもの、酷くむごたらしいものを観てしまったかのような、正視できないほどのいたたまれなさを覚えた。〔二万円〕、というむき出しの言葉と、それに呼応する笑い声が耳にへばりついて離れなかった。
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(↑寺田寅彦変態詩。案外イイじゃないか)。

 寺田寅彦論第二弾である「潜在・日本・必然――寺田寅彦のナショナリズム」を書いた。寺田のフロイト『夢判断』受容から出発して、俳諧の本質的性格を司る「日本」的風土性とそこに宿る「必然」性の位相を、ナショナリスティックな意識と共に考える。「ディテール・プロバビリティ・モンタージュ」の続編。文字数は21808字、原稿用紙に直すと55枚。またひとり、大学生を卒業させてしまった……(私の学校では卒論は50枚程度の分量だったのである)。目次は以下。


序、寺田寅彦の偶然論復習
一、フロイトの「潜在」構造とモンタージュ論
二、偶然論と両立する「必然」
三、社会主義思想批判
四、俳諧と「日本」的風土
五、新興俳句運動批判
六、開放的なナショナリズムを支える概念連鎖
七、「黴菌」に対する危機感

 

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