2014年01月

Elatan'sStarmap

想像上の銃(瞑想について-08)」より続く


『巻き添え』

インタビュールームを出たら、リネーはもういなかった。

きっと他に仕事があるのだろう。アルヴィンと顔を見合わせた。片言の日本語ができるばっかりに、「うつ」だの「危険」だの刺激の強い言葉が飛び交うインタビューに同席することになってしまい、どんな風に感じているのだろうか。何かひとこと、釈明したい気持ちもあった。

でも、瞑想者にそんなことを言ったところで何になるだろう?
現象や物事を言葉で説明したとして、どれほどの価値があるのか? » すべて読む
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ドレフュス事件をめぐって二分する世論を風刺した漫画( 出典:Wikipedia )


――われ弾劾す!

 これは19世紀末のフランスのある新聞に掲載された、作家のエミール・ゾラによる大統領宛ての公開質問状の見出しである。ゾラは、当時世間を騒がせた所謂ドレフュス事件において、証拠不十分のままスパイ容疑で逮捕されたユダヤ人のドレフュス大尉を弁護する為に、軍部を批判してこの質問状を作成した。この事件の背景には、西洋キリスト教社会に根深いユダヤ人差別がある。この事件についての世論は当時真っ二つに分かれたが、ドレフュスを罰するべしという意見の中には「ドレフュスが本当に犯人であるかどうかよりも、国家の威信を守る事が重要なのだ」というものまであったそうだ。

 さて、ではボクシングの話をしたい。昨年12月3日に行われたIBF王者亀田大毅とWBA王者リボリオ・ソリスのスーパーフライ級統一タイトルマッチをめぐる一連の騒動について、だ。ご存じ無い方の為に試合前日の計量から1月10日の倫理委員会までの経緯を説明しておくと、大体以下のようになる。

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night fire


見えないホタル(瞑想について-07)」より続く


『どうしてわかってくれない』

インタビューが終わったら、もう休憩時間だった。
いつもは昼寝をするかシャワーを浴びるかどちらかだが、明日の出発に備えて部屋を掃除した。明日はこの部屋を引き払う。私の後はまた別の誰かが来て、この部屋で眠り、キッチンで仕事する。瞑想センターはその繰り返しだ。

ATとのやり取りが完結したという安心感のためか、午後2時半の瞑想は大きなトラブルには見舞われなかった。それでもやはり疲れた。10日目の昼食がすんでしまえば、キッチンの仕事はもう終わったも同然だ。サラダはもう出さないので、サラダの仕事もない。瞑想のあと部屋へ戻り、身体を休める。キッチンの仕事はないので、ダイニングホールのセッティングをぼちぼち手伝いながら、夕食時間を迎えた。

自分を忙しくする仕事がないと、自分の存在価値に自信が持てなくなる。
あるいは、10日分たまったおしゃべりの欲求を大急ぎで満たしている参加者達のエネルギーに当てられたのだろうか?

夕食後、6時の瞑想が最後のグループ瞑想になる。気分はよくない。
無事に1時間過ごせるだろうか?ヒステリーを起こすようなことはないだろうか?

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「たましいの自然な動きはすべて、物質における重力の法則と類似の法則に支配されている。恩寵だけが、そこから除外される」(シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』)
 
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豊田市美HP(展覧会URL)

 SF好きとしてはたまらなく興味をそそられるタイトル「反重力」。9月から始まったこの展覧会の告知文には、宇宙の加速膨張、宇宙旅行、テレポーテーションなどの言葉が並び、出品作家の名前にも心躍る。一方で気になるのが、同展が「揺れる大地 われわれはどこに立っているのか 場所、記憶、そして復活」をタイトルに掲げ、東日本大震災とその後の世界に正面から密接に向き合った愛知トリエンナーレとの連携事業であることだ。連携事業でありながら「反重力」という言葉づかいはいかにも解放的で大地と、その上に成り立つ現実から離れているように思える。しかし、この展覧会は現実世界、すなわち震災後を生きる2013年の私たち自身にとって、単なるファンタジーでも現実逃避でもない。むしろ、私にとっては途方もない現実味を伴ったものだった。以下はそのことについて展覧会を振り返りながら考えてみたい。
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正直、文章を書く元気がない。全然ない。
原因は、解決してから思う存分書こうと思っていたが、解決する目途が一向に立たないので、ここにぶちまけてカタルシスの一助としたい。

理由はこうである。
 

  1. 広島の時お世話になった会社が私が退職する直前あたりから経営不振に陥った
  2. 給与の遅配が発生
  3. 私には丸々二か月分の未払い給与が残っていた
  4. 一度目は半月ほどの遅配のすえ受領
  5. 残り一月分は現在一か月以上の遅れ
  6. 業を煮やした私は労働基準監督署に相談
  7. すでに他の社員から数件の通告が来ていた(他の社員も全員もらえていない)
  8. 私の給与未払い分も申告という形で申請
  9. 労基署が社長を呼び出し事情聴取
  10. 会社を潰す気はないが(倒産してくれれば、国の制度で、給与額の8割がもらえる可能性大)、経営の先行きはもちろん、支払目途立たずとのこと
  11. そこへきて、新宅君は9月末での退職ではなかったかと社長が言っている、とのこと。
  12. 郵送で受領していた雇用保険証などの退職日はちゃんと10月31日になっているため、証明書として送付
  13. 提出するも、社長はあくまでも、彼は9月末での退職だったと言い張っているとのこと。
  14. 口約束の多い会社で、出勤簿などをつけていなかったため、証明できる書類がない。少なくとも10月中にフルタイムで勤務していた証明になるようなものを片っ端から集めなければならない。
  15. それらしい書類が乏しく、難渋きわまる。
  16. 何らかの証明手段について考えすぎて頭が破裂寸前←イマココ
 

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10日目、メッタの日は朝早く目が覚めた。

朝食当番ではなかったので、ホールへ行って瞑想した。おしゃべりが解禁になる前の、最後の数時間を味わいたかった。早朝の瞑想は「グループ瞑想」ではなく、参加者はホールで瞑想してもよいし、自室で瞑想してもよい。キッチン要員は参加の義務はない。また、事情があれば中座することもできる。

いつものように6時からパーリ語の経典の詠唱が流れ、6時半で瞑想は終了した。ATから指導されたとおり、いったん自室に戻りベッドに横になる。頭からつま先まで意識を移動させ、気持ちを落ち着かせてからキッチンに向かった。

昨夜の予想どおり、この日は曇っていた。

いつもなら夜明け前の空がすみれ色に冷たく澄み渡るのに、今朝は薄い雲が空を覆いつくしている。その雲を通過して地面に届く光は平面的で、まるで皆既日食のようだ。砂漠の白い大地が妙に明るく、空の光を反射しているというより、それ自体が発光しているように見えた。

スタッフ用のダイニングルームでは、すでに仲間たちが朝食を摂っていた。
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『箱の蓋』

ATとのインタビューのあと午後2時半、午後6時とグループ瞑想があったが、がんばり過ぎない瞑想でそこそこ上手くいった。ATに事情を話すことができたという安心感ゆえかもしれない。

午後9時、キッチン要員のミーティング。私と面談したATから短いコメントがあった。



「8日目、9日目は参加者のエネルギーが高くてトラブルの起きやすい時期なので、参加者の様子がおかしかったら、どんなことでもすぐに連絡してくださいね」
 


これはある意味、私へのメッセージで、「自分のコンディションには十分注意を払って、何かおかしなことがあったらすぐに相談しに来るように」ということなのか?いつかは箱の蓋を開けて、中を掃除する必要があるかもしれない。不用意にそんなことをしたら収集がつかなくなりそうだが、心の仕組みがわかってきたのは一歩前進だ。


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romaine lettuce
                         ロメインレタス

脱走したいわけじゃない(瞑想について-04)」より続く。
                    

『記憶の塊』

7日目の午前中、キッチンの調理台でサラダに使う大きなレタスを切っていたときのことだった。レタスはロメインと言う種類の、白菜くらいの大きさのもの。キッチンの仲間が私に、「イタリアンドレッシングの作り置きはどこにあるの?」と聞いてきた。私はサラダの係なのでドレッシングも管理していたが、テーブルでサラダの横に並べる小さい容器入りのドレッシングか、大きな容器に入った補充用のドレッシングか、とっさに判断がつかなかった。もたもたしていたら、すぐ横で作業していた別の仲間があっさり答えた。「ワゴンの中段」

これだけのことが、一体、どうしてあんなに堪えたのだろう?

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【幸福否定の研究とは?】

勉強するために机に向かおうとすると、掃除などの他の事をしたくなったり、娯楽に耽りたくなる。自分の進歩に関係する事は、実行することが難しく、“時間潰し”は何時間でも苦もなくできてしまう。自らを“幸福にしよう”、"進歩、成長させよう”と思う反面、“幸福”や“進歩”から遠ざける行動をとってしまう、人間の心のしくみに関する研究。心理療法家、超心理学者の笠原敏雄が提唱している。


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